デイリーマーケットコメントー低調な中国PMIでリスク資産低下

投稿日: 2023年5月31日18時30分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・中国PMIは低調でリスク敏感通貨下落
・安全資産への流動と日本政府の為替介入警告から円は回復へ
・ユーロは本日のドイツのインフレ指数次第、ハイテク銘柄急騰

中国PMIは経済活動の勢い失速を示唆

世界第2の経済大国である中国から本日、低調な経済指標が発表され、世界市場は落胆気味と言えます。中国の製造業は5月にさらに縮小し、最新の企業調査によると、サービス業の成長も勢いを失っていることが示唆されました。

中国経済再開の勢いが衰えていることは明らかで、中国政府には新たな刺激策によって経済活動を活性化させるよう圧力が強まっています。しかし、民間債務がGDPのほぼ300%の水準であるため、さらなる刺激策は、金融安定リスクを増幅させる「諸刃の剣」となる可能性があることが難点と言えます。

市場の反応としては、中国経済に依存している国々の通貨である豪ドルとNZドルが6か月振りの安値まで下落しています。アジア株式も同様で、香港の株式は2.5%下落し、弱気市場に参入しました。

唯一の希望の兆しは、中国が輸出を当分の間増幅させることで、欧米の中銀によるインフレ抑制の進展を助長することでしょう。

ユーロ下落、円高

欧州圏では、単一通貨であるユーロが打撃を受けています。パンデミック後の製造業における副次的な影響は、ドイツを不況に追い込み、経済成長の鈍化となりました。一方、インフレ圧力は、今週スペインとフランスで急速に冷え込んでいることが示唆されています。

これらの動きから、ECBが市場価格通りに、あと2回にわたる0.25%の利上げを実施するのが難しくなりました。本日発表のドイツのインフレ指数が他国同様に冷え込みを示唆する場合、市場は、ECBの利上げ観測を後退させるか、利下げ観測を前倒しさせるかとなり、どちらもユーロ下落となる可能性があります。

世界経済の成長への懸念とリスク回避に特徴づけられる環境の下、日本円が恩恵を受けました。日本円は、世界的な債券利回りの低下と、緊急事態に向けての政府による為替介入への可能性から、上昇を再開しています。

実際には、ここ最近の円安は日本政府による為替介入を正当化するほど急速ではないため、可能性は非常に低いでしょう。しかしながら、政府による口頭での介入への警告は、おそらく円安から利益を狙う一部の投資家へのコスト安の戦略といえるでしょう。

米ドル続伸、株式市場はハイテク銘柄の急騰

ユーロと中国経済に敏感な通貨の下落から、米ドルは恩恵を受けています。ドル指数は現在、高値を示しており、安全資産の流れが追い風となっています。本日、JOLTによる求人件数に加えて、FRBメンバーによる一連の講演が控えているため、注目となるでしょう。

株式市場では、AI関連のハイテク銘柄の急騰により大幅な利益で今月は締めくくられるでしょう。重要なのは、ハイテク銘柄の多いナスダックと債券利回りのマイナスの関係が今月解消され、両者ともに連動して上昇したことです。

企業収益はほぼ横ばいであるため、ハイテク株の動きを支配する力はもはや金利ではなく、流動性の流れが大きく影響しているようです。これは、米財務省が債務上限解除の後、現金水準を補充するべく、この夏に金融市場から流動性を吸い上げる予定であることから、リスク資産のラリーが終わりに近づいている可能性を示唆しています。