デイリーマーケットコメントーFRB議長は利上げ停止示唆も債務上限交渉への懸念が市場に圧力

投稿日: 2023年5月22日19時30分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・FRBパウエル議長が来月にも利上げ停止示唆で利上げ観測は後退
・米ドル下落もすぐにサポート見つける
・債務上限交渉の行方への懸念から株価も下落

FRBパウエル議長は利上げ停止示唆でハト派転向

先週、FRBメンバーは、6月の利上げに賛成する意見を次々と明らかにし、多数派と見られました。そして金曜日には、FRBパウエル議長自身が、次回会合での利上げか一時停止かについての見解を述べました。

市場は、議長が次回会合で最後の利上げ実施を支持すると見て、一時停止へ観測を後退させました。しかしパウエル議長は、予想外にも一時停止への同意を示し、これまでの利上げ賛成派の意見とバランスを取る形となりました。

議長は、「データと見通しの進展を慎重に評価する必要がある」と述べ、これまでの利上げの影響の不確実性と、銀行危機からの信用環境の引き締めについて言及しました。この発言によって、パウエル議長はFRBが今後様子見期間に入ることを最も明確に示しました。

パウエル議長は条件付きのハト派転向か

この発言により、6月14日での0.25%の利上げ観測は後退し、現在16%から17%となっています。しかし、今年後半の利下げ観測がわずかな上昇に留まったことも注目されます。

来月会合において、FRBメンバー内で意見が分かれることが予想されますが、パウエル議長は、条件付きでの一時停止を示唆することで、タカ派を説得しようとしているようです。

パウエル議長は、6月以降もに引き締めへの可能性を示唆することによって、次回会合での利上げ停止への全会一致だけでなく、FRBとして年内での利下げの意思はないことを明確にすることができるでしょう。

米ドルは利上げ停止発言によりやや下落

FRB議長による予想外のハト派姿勢への市場の反応は、やや抑制されているようです。米国債利回りは金曜日も上昇し続けた後、本日下落しました。米ドルは日本円とリスク連動通貨に対して、最も下落しましたが、欧州の通貨に対しては小幅下落に留まりました。

バイデン大統領が、G7サミットで訪れている日本で、中国との関係はまもなく改善することを期待していると述べたことから、両国間での緊張関係緩和を期待して、豪ドルとNZドルは上昇しました。

ユーロとポンドは本日、上昇幅を拡大しようと試みていますが、明日の5月のPMI速報値を前に両通貨とも大きな上昇となることは難しいかもしれません。

米債務問題の期限が近づく中、株価は上値の重い動き

先週金曜日の米株式市場では、全主要3株価指数の終値は下落したものの、S&P500 、及びナスダック指数は上昇して週を終えました。

6月1日の期限が近付くにつれて、米債務上限問題の不確実性が市場の懸念材料となりつつあります。上院と下院通過には時間を要する為、債務上限引き上げの合意への米政権と米議会に残された時間は、数日のみとなります。

先週金曜日の共和党と民主党の協議は、意見の相違が浮き彫りになり、物別れに終わりました。昨日の日曜日の再協議については、共和党のマッカーシー下院議長が、「非常に順調だ」と評価しています。本日後半には、バイデン大統領とマッカーシー下院議長の協議が予定されています。

債務上限引き上げを巡る重要な協議を控え、米主要株価先物指数は横ばいで推移し、欧州株価は、強弱混合の動きとなっています。