デイリーマーケットコメントーFRB利上げ観測復活で米ドル上昇

投稿日: 2023年5月15日18時53分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・ミシガン大学消費者調査で長期インフレ期待上昇とFRBタカ派発言から米ドル上昇
・利回りの上昇で日本円に打撃もゴールドはディップ買いから回復へ
・需要への懸念から原油価格下落、トルコ大統領選後トルコ・リラ下落

FRB利上げ観測から米ドル上昇

ここ数か月で下落基調だった米ドルは、復活の兆しを見せています。先週米ドルは、リスクセンチメントが悪化する中、FRBの利下げ観測に疑問を投げかけるような経済データから、安全資産として回復しました。

先週金曜日に発表されたミシガン大学消費者調査によると、5月の長期インフレ期待は過去10年以上で最高水準まで上昇しました。このため、FRBのインフレとの戦いが終わっていないことを市場は再確認したようです。この調査を受けて、市場はFRBによる6月の利上げの可能性を検討し始めたため、米ドルは上昇し、一方株式市場は下落しました。

現在市場が示唆する6月の利上げはわずか12%ですが、FRBのメンバーは、この数字が真の可能性を反映していると見ているかもしれません。FRBのボウマン理事は、先週のスピーチで、最新のCPI数値と雇用統計はインフレの下降トレンドへの一貫した証拠となっていないことから、「追加の引き締めが適切である可能性が高い」と述べました。

市場はこのボウマン理事のタカ派発言に耳を傾けませんでしたが、今週のFRBメンバーの発言が同様なトーンとなる場合、6月の利上げの可能性が高まり、米ドル上昇をサポートし続けるでしょう。本日、シカゴ連銀グールスビー総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁とリッチモンド連銀バーキン総裁の発言が本日予定されています。

円安、ゴールドは再び回復

FRB利上げ観測が高まる中、日本銀行の金利引締めへの消極的な姿勢により、金利差が拡大し、日本円は圧力を受けているようです。

そうはいっても、今週金曜日の全国消費者物価指数が日本円にとって希望の光となるかもしれません。日本全体のインフレ圧力は、東京の消費者物価指数を反映する場合、4月に引き続き上昇したと予想されています。インフレ上昇となる場合、日銀の今年の引き締めへの憶測の追い風となり、円高への勢いとなる可能性があります。

一方ゴールドは、米利回りの急騰に逆らって、本日上昇して取引されています。ゴールドは、ここ数か月の銀行破綻による保護資産への需要増加と、FRBが緩和サイクルに入るとの憶測から、過去最高値まで上昇しています。

問題は、FRBの利下げを巡る市場の織り込みが誇張されていることでしょう。ゴールドは現在、1,975ドルから2,050ドルの間のレンジ相場となっており、今週FRBメンバーが、市場に6月の利上げの可能性を納得させる場合、ゴールドはこのレンジの下限に近付くかもしれません。

原油価格下落、トルコ・リラは過去最低値

エネルギー分野では、先週原油価格が4週連続で下落しました。米政府が来月、戦略的石油備蓄からの売却を完了し、原油補充を開始する可能性があるとのニュースにも関わらず、原油価格は下落しました。これは、中国の経済再開の勢いが失われつつあり、需要への懸念が広がっているからでしょう。

最後にトルコでは、大統領選にて、ほぼ開票したにも関わらず、過半数を超える候補者が未だにいないことから、2週間後の再選挙の可能性が高まりました。これで、エルドアン現大統領による人為的な低金利がしばらく続くことが示唆され、トルコ・リラは米ドルに対して過去最低値まで下落しました。