デイリーマーケットコメントー景気後退の懸念高まるも米ドル安全資産の地位維持できず

投稿日: 2023年4月27日18時18分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・米経済の不透明さから米ドル下落
・本日の米GDP発表前にアトランタ連銀によるGDP予測は下方修正
・明日は日銀政策発表、今後のガイダンスに焦点
・景気後退への懸念からダウ・ジョーンズとS&P500下落、ナスダックは上昇

米ドルは他の主要通貨に対して下落基調

米ドルは昨日、他の主要通貨に対して下落し、本日も続落しています。世界最大の経済を取り巻く環境が不透明な中、市場は米ドルを安全な避難所として信頼することが困難であると感じているようです。

昨日、米下院が政府の債務上限を引き上げる法案をかろうじて可決しました。しかし、法案は上院を通過する可能性がないため、バイデン大統領は拒否権行使の意向を示しました。その上、米政府がファースト・リパブリック銀行救済に介入しないと表明したことから、資産売却計画について、投資家は見通しがつかない状況となりました。

アトランタ連銀による第1四半期のGDPは、前半期比で1週間前の2.5%から1.1%に大幅に下方修正され、本日発表の米GDPは下振れリスクとなりました。これは、予想以上に減少した3月の耐久財受注データが予測に織り込まれたためでしょう。

本日の米第1四半期GDPに注目

本日のGDPデータは、過去3か月間で米経済が2%成長したと見られています。このため、予想以上の下振れは、市場の不安材料となり、今年後半のFRB利下げ観測が高まる可能性があります。FF金利先物によると、来週のFRB会合にて、0.25%の利上げが予想されていますが、年末までに0.5%以上の利下げも織り込まれています。

したがって、本日のGDPデータが期待外れとなる場合、米ドルに圧力が加わるでしょう。もしデータが予想外に上昇したとしても、利下げ観測が消える可能性は低く、米ドルの回復は限定的で短命に終わるかもしれません。ECBによる年内の0.75%相当の利上げが見込まれている中、ユーロ/ドルは、しばらく上昇基調となるでしょう。

明日は日銀植田新総裁による初の政策発表

一方日銀は明日、植田新総裁初となる政策発表を控えています。植田総裁は、現状の政策を早急に修正する必要はないと繰り返し述べているため、今会合は現状維持と見られています。したがって、日銀が今後数か月でどのタイミングで政策修正を行うのかに市場は注目することになるでしょう。

10日に行われた就任会見で、植田総裁は、金融混乱後の米利回りと国内の利回りが低下したため、緊急にイールドカーブ・コントロールの見直しを行う必要がなくなったと述べました。したがって、夏頃まで現状維持との見解が一部の投資家を落胆させ、円に打撃となる可能性があります。しかし、今後の会合での政策修正が示唆される場合、円はサポートされ上昇するかもしれません。

ハイテク株上昇からナスダック上昇も米株式市場は強弱混合

米株式市場では、景気後退への懸念が重しとなり、ダウ・ジョーンズとS&P500は共に赤字で取引を終えました。一方ナスダックは、0.5%近く上昇しました。ハイテク株は急騰しましたが、工業株のような経済に敏感なセクターの株価は下落しました。

しかしながら、FRB利下げ観測とともに、決算報告への市場の期待は低く、大きな失望となる見込みはないため、株式の下落は抑制される可能性があります。

一方コモディティでは、先週の米国の原油在庫が予想以上に減少したとのデータにも関わらず、昨日原油価格は約4%下落しました。これは、市場の景気後退への懸念を浮き彫りにしており、短期的な改善の兆候はあるにせよ、将来的な燃料需要に影を落とすかもしれません。