デイリーマーケットコメントー米小売売上高の発表を前に米ドル続落も株価上昇

投稿日: 2023年4月14日18時35分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・相次ぐ軟調な米経済指標からFRB利上げ停止観測高まり米ドルは1年ぶりの安値
・FRB利上げ停止観測から米株価上昇も本日の大手銀行決算報告で下落リスクも
・ECBは利上げ観測でユーロは1.11ドル付近まで上昇、日本円は売り緩和

米生産者物価指数も低調でFRBによる利上げ停止観測に信憑性増す

先週の低調なISM指数で浮き彫りになった米経済状況は、今週発表された米CPI消費者物価指数と米PPI生産者物価指数でも確認され、3月の好調な米雇用統計に影を落とすことになりました。

生産者物価指数は、ほとんどすべての測定値が予測と前月の数値を下回り、米インフレ率が3月に急激に減速したことを示しました。さらに、週刊失業保険申請件数は、ここ最近の高値である23万9千件まで上昇し、米国経済の勢いが失いつつあることを示唆しています。

本日は、米小売売上高に注目が集まります。小売売上高は、2か月連続で0.4%減少すると予想されており、かなり厳しいと言えます。しかし、市場のFRB利上げ停止観測への期待が高まる中、下振れ予想は上振れへのサプライズとなるため、投資家が間違いを起こす可能性もあります。

米ドルは1年ぶりの安値まで下落

米ドルは、銀行危機以来かなりの打撃を受けており、米経済全体の信用環境を引き締めることが予想されているため、景気後退のリスクが高まっています。

銀行危機の最中に行われた3月のFRB会合では、メンバーがあまり懸念を表明していなかったことが議事録でも明らかになり、パニックも沈静化していますが、現在、ほとんどの経済データが成長圧力と価格圧力の両方の勢いの低下を示しているようです。これは、FRBによる利上げの影響の効果が見せ始めているためともいえるでしょう。

このため、米ドルは過去1か月間で圧力が強まり、ドル指数は昨年9月のピークから約12%ほど後退し、1年ぶりの安値を更新しました。

米ドルは、特にユーロやポンド、また豪ドルに対してドル安となっているようです。しかし、日本円に対しては、日本円自体の脆弱さと奮闘しているため、それほど下落はしていないようです、

しかしながら、本日の小売売上高がたとえ好調な結果となって、米ドル上昇となったとしても、FRBが年末までに利下げをすると市場は確信してるため、その上昇も限定的となるかもしれません。

ユーロはECB利上げ観測から上昇基調

ユーロは、おそらく米ドルのFRB利下げ観測から最も恩恵を受けている通貨かもしれません。ECBは現在、世界的な引締めサイクルが終焉に向かう中で最後のタカ派となっています。スロベニア中銀のバスレ総裁は昨日、ECBの5月の政策決定は0.25%から0.5%の利上げになるだろうと示唆しました。

ユーロは米ドルに対して、本日1年ぶりの最高値である1.1075ドルまで上昇しています。ポンドも1.2510ドル辺りで安定しており、豪ドルは昨日の上昇から小幅下落しています。

豪ドルは今週、オーストラリアでの好調な雇用統計と中国の堅調な貿易統計から押し上げられて上昇しています。

しかし、日本円は苦戦しているようです。これは、日銀の植田新総裁が、国内のインフレ率が今年後半にも2%を下回ると予想し、賃金上昇にも関わらず、大幅な引締めの可能性について言及を控えたことによります。それでも、本日の円は概ね堅調で、ドルは132.30円前後まで小幅下落しました。

テクノ株好調も本日の大手銀行決算報告に要注意

一方で米株式市場は、景気後退リスクにも関わらず、FRBの利上げ一時停止が間近に迫っていることへの期待から、センチメントは前向きのようです。S&P500は先日、2週間ぶりの高値を更新して、1.3%上昇して取引を終えました。

テクノ株も好調で、ネットフリックスが4.6%の上昇で牽引し、ナスダック総合指数は2.0%上昇しました。ネットフリックスは来週に決算報告を控え、市場は新しい広告を含む購読モデルが収益を押し上げると期待しているようです。

本日は、大手銀行であるシティグループとウェルズファーゴそしてJPモルガンによる第1四半期の決算報告が予定されています。主要な貸し手であるこれらの銀行が、中小銀行を中心とした地方銀行セクターの金融ストレスから影響を受けたのかについて、市場は査定することになります。Eミニ先物は、これらの決算発表に先立って、わずかに下落して取引されているようです。

これらの決算報告で、融資基準が大幅に厳しくなったとの兆候が示される場合は、米株式市場の最近の上昇を取り消す可能性もあるでしょう。