デイリーマーケットコメントー銀行株上昇に伴い株価は回復ムード、米ドル下落

投稿日: 2023年3月28日19時27分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

・銀行危機の緩和で金融株上昇へ
・ドイツ銀行への懸念も欧州規制当局は対応政策なし、ユーロ小幅上昇
・FRB利下げ観測で米ドルに圧力、今週発表の米PCEに注目

銀行危機への懸念の後退で市場のムード向上へ

より深刻な銀行危機への懸念はさらに後退し、本日はダメージをうけた銀行株が回復しつつあり、リスク資産は上昇しています。銀行セクター救済のための米国財務省とFRBによる協力体制は、シリコンバレー銀行崩壊から引き起こされたドミノ効果への懸念を着実に払しょくすることに役立っているようです。

この最新の例として、ファースト・シチズン銀行がシリコンバレー銀行の資産を買収することが発表されました。また同時に、FRBはファースト・リパブリック銀行についても、支援を最大化すべく、緊急融資ファシリティの拡大を検討しているとも報道されました。

一方欧州では、先週ドイツ銀行のクレジット・スワップが急増し、継続的なリスクへの懸念が示唆されましたが、欧州のリーダーは、銀行セクターが「強力な資本と流動性を背景に回復力がある」ことを強調しました。ドイツ最大の銀行に対して、市場のパニックを鎮めるために、特別な政策対応がないことは、欧州の規制当局とECBが、ドイツ銀行の財政状況にある程度の信頼を持っていることを示しています。そのため、株価は現在回復しており、米株式市場の反発にもつながっています。

株式市場は銀行株上昇が牽引

S&P500は昨日、一時指数が4,000レベルを上回り、その水準を維持することはできなかったものの、上昇で取引を終えました。この後退の理由は、銀行危機の緩和により、市場が、マイクロソフトやアップル、またアルファベットなどのテクノ株大手の銘柄から、金融株に移行したためでしょう。

S&P500銀行指数は昨日約3%上昇し、ストックス欧州600銀行指数は、本日1%上昇しています。

ここ数日間は、重要な経済イベントや指標の発表がないため、リスク選好資産におけるこの慎重なムードは継続するでしょう。しかし、今年後期でのFRB利下げ観測が高まる中、市場はFRBメンバーの発言に注目しています。

FRB利下げ観測が米ドルの重荷

本日やや上昇している債券利回りと株式を反映した市場の堅調さにも関わらず、市場は依然として、12月までに約0.5%の利下げを織り込んでいます。これは、金融セクターのストレスが、米経済に打撃となるには十分だと市場は見込んでおり、おそらく米ドルが後退している理由と考えられます。

米ドルは本日、スイス・フランとカナダドルを除いた、ほぼ全ての主要外貨に対して下落しています。しかし、国際金融システムの健全性に対する長引く懸念は、安全資産である米ドルの支えとなっており、ユーロやポンドなどが重要な水準となるレベルまで回復していない理由となっています。

原油は回復ムードへ

それにも関わらず、コモディティでもやや明るいムードであることは明らかです。先週、先物が1年以上の安値を更新した後、原油は低迷から回復傾向にあります。ゴールドは、ここ数日、1オンス2,000ドル辺りまで何度か上昇しましたが、本日は下落しています。

今週は、価格高騰との戦いで銀行危機が生じた米規制当局の葛藤の中、米PCEインフレ指標とユーロ圏のCPI指数の発表が続き、市場の注目となるでしょう。