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・銀行危機をめぐるリスクも一段落で市場はFRBの利下げに期待
・ゴールドは安全資産への需要低下で下落、株価は回復へ
・米ドルは市場の安全資産への逃避の恩恵を受けず圧力受ける
FRB利下げ観測で市場の秩序も回復へ
今月は、銀行システムの危機が経済に深刻な影響を与えないように、規制当局が火消しに回るなど、世界市場にとっては混乱の月となりました。FRBは問題を抱える銀行のための金融融資プログラムを展開し、米国財務省は預金者へ無制限の連邦保証を検討しています。一方で、スイス国立銀行もUBSによるクレディ・スイス買収の調整の一端を担いました。
これらの強硬な政策対応は、FRBによる夏あるいは秋までの利下げ観測の高まりとともに、少なくても今のところ、金融市場の秩序回復に役立っているようです。市場は基本的に、今週水曜日のFRB政策会合にて、最後の利上げを予想しており、その後は利下げを開始すると見ているようです。
FRB利上げ観測の修正は、銀行がバランスシート保護のため、貸し出しを縮小するとの期待を反映している表れでしょう。貸し出し縮小は、FRBがインフレ抑制のために最優先する課題でもありました。「問題」となるのは、米経済データが相変わらず堅調な数値を示しているため、FRBが利上げを進めるべきか、一時停止するべきかについて板挟みとなっていることです。
株式市場は回復もゴールドは下落
このFRB利下げ観測は、本質的にお金の価格である米国の利回りを押し下げているため、その代わりに、ハイテク株から仮想通貨までリスク資産が急騰し、その恩恵を授かっています。金利に敏感なナスダックは先週の安値から6%も上昇しており、Google やエヌヴィディアといったハイテク大手が株価上昇を牽引しています。
銀行セクターの危機に際して、株価が上昇してる現象は奇異と言えますが、これは利回りの低下が影響しているためでしょう。市場はしばらくの間、金利の低下によって、問題を抱えた経済と企業収益にどのような影響を及ぼすかを吟味するため、FRB利下げ観測が焦点となるでしょう。
昨日、ゴールドは一時1オンス2,000ドルを超えて上昇しましたが、現在はジリ安のようです。米ドル安と安全資産への需要拡大もゴールド上昇につながりました。しかし、米利回りの回復とともに、本日勢いを失っているようです。明日のFRB政策発表によって、ゴールド価格も影響されるでしょう。
圧力下の米ドル
銀行破綻からのリスクにも関わらず、米ドルはここのところ圧力を受けており、これまでの銀行セクターの信頼危機で受けた安全資産への逃避の流れを引き付けることができていないようです。おそらく、利下げ観測の中、FRBがドルスワップ協定を通じた流動性供給で他の中央銀行との協調を発表したことが反映しているのかもしれません。
明日のFRB政策発表では、今のところ利上げが予想されていますが、まだ疑念は残ります。最も賢明な動きは、FRBが先週のECBと同じこと、つまりインフレ抑制のために金利を引き上げ、銀行を巡るリスクが悪化する場合、それに対処する策を準備していることを表明することでしょう。
年末までの最終レートに関しては、5%以上に達するというFRBの金利予測と、4%前後に留まるとの市場の予測には大きな差が生じています。したがって、FRBが今年の金利見通しを5%近くまで引き上げて、利下げ観測を後退させる場合、米ドルは復活する可能性があるでしょう。