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・一連の緊急対策発表も銀行への懸念は根強く
・株価と債券利回りの下落に伴い日本円は上昇
・FRBは利上げ一時停止、利下げ開始も視野に
・ゴールドは2,000ドル超えて急騰、原油価格は15か月ぶりの安値まで下落
銀行危機からの影響を懸念して安全資産への逃避へ
先週金曜日、米ドルは他の主要外貨に対して下落し、日本円のみが安全資産として恩恵を受けました。本日、米ドルはやや反発してますが、日本円に対しては引き続き下落しています。
米政府による緊急支援とスイス中銀によるクレディ・スイスの融資、またファースト・リパブリック銀行の救済にも関わらず、銀行株は続落しています。これは、市場が依然として、金融危機からの影響と、大幅利上げが世界経済に及ぼす影響から、景気後退の可能性が高くなっていることへの危惧を裏付けしているためです。
この週末には、UBSがクレディ・スイスを30億フランで買収すると発表し、その直後、FRBとECBまた世界の主要中銀が、「市場の流動性を高めるために協調行動をとる」との声明を発表しました。
しかしながら、クレディ・スイスが160億フランの「その他ティア1債」(AT1債)をゼロに切り下げると述べ、一部の債券保有者に何も残らないことで、市場の不安心理が残りました。実際、日本円は本日、安全資産の流れを引き続き受けましたが、アジア市場は赤字で取引を終え、欧州市場、米国先物、共に安値で取引を開始しました。
市場はFRBの政策転換に期待
銀行セクターへの市場の懸念は、市場の主要中銀による将来の利上げ観測にも表れています。先週、ECBは0.5%の利上げを決定しましたが、将来のガイダンスについては発表を控えたため、市場は現在、75%近くが、次回会合にて利上げ見送りを予想しています。
FRBに関しては、今週の会合にて、60%が利上げ一時停止、残りの30%が0.25%の利上げを支持しています。また、年内の利下げも織り込まれており、最終レートは年末までに3.6%になると予想されています。
今週水曜日のFRBによる政策発表に、市場は注目して見守ることなるでしょう。昨年夏以降、米インフレは著しく減速していますが、依然としてFRBの目標である2%の3倍で推移しています。そのため、FRBが市場の金利予想と一致した金利政策を実施すると考えるのは難しいのが現状です。したがって、水曜日の決定を取り巻くリスクは上向きとなる可能性があります。結果がハト派と捉えられない場合は、米ドル上昇につながるかもしれませんが、株式市場には更なる圧力となり得るでしょう。
ゴールドは2,000ドルを突破、原油は下落へ
市場が安全資産へ流動する中、米ドルは下落し続け、世界中の債券利回りが新たな圧力を受けています。これにより、ゴールドは先週金曜日の急騰から本日もさらに続伸して、2,000ドルを超えて取引されています。ゴールドは、3月8日に更新したピークの2,070ドル辺りまで上昇するかもしれません。
銀行危機は深刻な景気後退を引き起こし、エネルギー需要にも影響を及ぼすとの懸念が高まったことで、原油価格にも影響が出ています。WTI原油先物は本日15か月ぶりの安値を更新し、水曜日にFRBが利上げを発表する場合、この懸念はさらに高まるでしょう。そのため、WTI原油先物は、2021年12月に更新した安値である62ドル前後まで低下する可能性があります。