デイリーマーケットコメント―米利上げへの懸念が残る中、中国の規制緩和で米株価上昇

投稿日: 2022年12月27日20時42分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 中国政府の渡航者の隔離期間撤廃で、薄商いの市場での懸念が緩和し、株価上昇
  • リスクオンムード回復で米ドルと円下落、黒田総裁の発言も円安要因
  • 中国の規制緩和で原油価格の上昇幅拡大、米寒波による原油供給懸念

中国政府による渡航者の隔離期間撤廃に市場は好感

昨日、中国政府が海外からの渡航者の隔離期間を翌月から撤廃することを発表し、市場のリスクオンムードが加速しました。中国の大部分で新規感染者数が急増する中での隔離期間撤廃は、中国政府によるゼロコロナ政策緩和の意向が示されています。

北京や上海等の主要都市での医療逼迫は、再び規制強化に繋がる可能性が市場で懸念されています。しかしながら、最近の中国政府の政策からは、遂にウィズコロナへの方向転換が示されており、市場にとってポジティブ要因となるでしょう。

米国と欧州での景気後退の現実性、及びFRBの金融引き締めへの懸念を背景に、過去数週間の中国での厳格なロックダウンは、今後の見通し悪化に繋がっていました。中国の消費活動再開、及びインフレ上昇によるサプライチェーンの混乱解消には、数週間は必要でしょう。中国政府に最近の動きは、ゼロコロナ政策再開の不確実性を高め、リスク資産上昇に繋がりました。

株価回復、しかしながら今年の大幅な下落の流れは継続

中国のポジティブなニュースは、クリスマス休暇後の株式市場が最も望んでいた上昇圧力を引き起こしました。本日のアジア、及び欧州株式市場は大幅に上昇し、米主要株価先物指数も上昇しました。

今月は米経済指標による方向性の判断が難しく、米株式市場の投資家にとって悲惨な月となっています。先週金曜日の米11月PCEデフレーターは、物価上昇圧力の鈍化を示しました。その一方で、消費低迷も浮き彫りとなりました。米週次新規失業保険申請件数は、底堅い労働市場を示している為、インフレが目標の2%付近に到達するまではFRBが現行政策を変更する公算は低いと市場は判断しているようです。

米12月ミシガン大学消費者信頼感指数が示したインフレ鈍化は、米株価回復には繋がったものの、市場ムード改善には繋がりませんでした。

今週も、市場の流動性低下が継続する模様です。本日の楽観ムードにより、今週に株価が一段と回復する余地があります。しかしながら、2008年以来、最大の下落で今年を終了する見通しが市場で広がる中、大幅な回復は期待できないでしょう。

米ドルと円は下落

リスクオンムードが米ドルと円を下落させた一方で、リスク通貨の豪ドルが最も上昇しました。中国の経済活動再開による豪経済の回復が期待され、豪ドルは2週間ぶり高値まで上昇しました。

中国からの観光客により、日経済も恩恵を受ける模様です。しかしながら、昨日、日銀の黒田総裁が長期金利の許容変動幅拡大は出口の一歩ではないと発言し、政策転換を否定しました。これを受けて、円は下落しました。

米ドルは対円で0.2%上昇し、対主要通貨では0.3%上昇しました。

需要期待と供給懸念で原油価格上昇

コモディティ市場では、米ドル安により、ゴールドが上昇し、1800ドル越えを達成しました。原油価格も上昇しています。ロシア政府は、他国も西欧諸国の上限設定に追随する場合には、2023年に日量50万バレルから70万バレルの減産の可能性を示唆した為、先週の原油先物価格は上昇しました。

中国の需要増加期待、及び米寒波による供給懸念も原油価格上昇の追い風となりました。

本日のWTI原油先物指数は80ドル越えを達成し、3週ぶり高値を更新しました。