デイリーマーケットコメントー英補正予算案でポンド急落、株価の下落継続

投稿日: 2022年9月26日20時02分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 英補正予算案がパニックを引き起こし、ポンド急落でパリティ割れ目前
  • イタリアの極右政党勝利による先行き不透明感でイタリア国債利回り上昇
  • 米ドル一段高、株価は下落したものの、本日は回復の見通し

英補正予算案は不評

先週金曜日に発表された英補正予算案に市場は落胆し、ポンドは急落しました。クワーテング英財務相は、英経済を下支えする為、50年ぶりの大幅減税を発表しました。エネルギー価格高騰への支援策は市場予想を上回る内容だったものの、債務残高拡大が市場の懸念材料となりました。

「小型予算案」は、サッチャー時代以来最も斬新な政策となりました。しかしながら、インフレと金利が上昇する中、トラス政権が物価上昇危機を回避する為の経済対策よりも、実験的な対策と市場では見なされました。

減税が経済活性化に繋がっても、インフレが悪化し、イングランド銀行が一段の利上げを余儀なくされます。これにより、政府の借り入れコスト上昇、及び政府の借金増大に繋がり、ポンドの下落スパイラルが発生します。

国債利回り上昇で、ポンドはパリティに向けて下落

昨日に下落したポンドは、本日のアジアセッションでも一段と下落し、対米ドルで最安値となる1.0382ドルを更新しました。その後、1.07ドル台まで値を戻しましたが、乱高下が継続しています。米10年債利回りは12年ぶり高水準まで上昇し、4.0%越えが視野に入っています。

国債利回り上昇、及び通貨下落は、不信任案への鮮明な兆しとなります。しかしながら、クワーテング英財務相は、今週末の追加減税発表を示唆しました。対GDP比での債務残高削減に関する中期的な財政計画が発表されるかは不透明です。

ポンド安を阻止する為に、イングランド銀行が緊急利上げに踏み切るかに注目が集まります。イングランド銀行は先週に利上げを実施したばかりですが、補正予算案が発表される前の利上げでした。予想されている利上げ幅は1%となっています。

イタリア総選挙後、ユーロ下落

本日、他の主要通貨は、対米ドルでの下落が一服したようです。本日前半の米ドルインデックスは、20年ぶり高水準114.527より大幅に低下しました。円は再度下落したものの、日銀が為替介入に踏み切った対米ドルでの145円台を下回っています。ユーロ、及びコモディティ通貨は先週金曜日の終値より若干下落しました。

イタリア総選挙での極右政党の過半数獲得見通しにより、本日のユーロ/ドルは0.9569ドルまで一時値を切り下げました。初の女性首相なり、連立政権を率いる可能性があるメロニ氏は、ロシアのウクライナ侵攻だけでなく、財政規律にも反する立場を取っていることから、市場はEUへの対応を不安視しているようです。

イタリア国債は欧州圏内で最大の下落幅となったものの、ドイツ国債利回りとの差は警戒レベルには達していません。

景気後退リスク上昇、ゴールドは最安値更新

殆どの通貨が対米ドルで下落する中、各国の中央銀行が利上げを余儀なくされ、景気後退リスク上昇に繋がっています。

ロシアがウクライナ占領地域で一方的な併合に向けた住民投票を行っていることも、市場の懸念材料となっています。しかしながら、国債利回り上昇により、地政学リスク上昇はゴールドの値上がりには繋がりませんでした。約2年ぶり安値付近で今週の取引をスタートさせたゴールドは、1645ドル付近で安定推移しています。

 株価は再度下落、しかしながら回復の可能性

先週金曜日にはS&P 500が6月以来の安値で引けた後、株価は若干回復しました。米主要株価先物指数は安値からの上昇を示し、欧州株式市場では、独、及び仏株価が上昇しました。

6月の安値を割り込むかに注目が集まりますが、急激な下落を考慮すると、緩やかな回復となる見通しです。市場は株価を安値で買い戻す前に、水曜日のパウエル議長の発言内容に注目するでしょう。