デイリーマーケットコメントー円回復、ECBのタカ派的見解でユーロドル上昇

投稿日: 2022年9月9日20時20分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 日本政府の警戒姿勢で、円を買い戻す動きが加速
  • パウエル議長はラガルド総裁よりもタカ派的姿勢を示したものの、ユーロドル上昇
  • エリザベス女王死去で英国が喪に服する中、ポンドは回復
  • FRBのブラックアウト期間控え、米株価は一段と上昇

為替介入懸念で、米ドルの利益確定売り加速

本日、財務省高官と同様に、日銀の黒田総裁が急激な円安について警戒姿勢を示したため、円が買い戻されました。首相との会談後、黒田総裁は「急激な円安は好ましくない」と発言し、日銀は為替レートを注視している姿勢を強調しました。

超緩和政策からの転換の公算は小さいですが、日本政府の警戒姿勢の強まりを背景に、急激な円安が続いた場合には為替介入が視野に入ってきました。

日本政府の発言を受けて、ドル/円は144円越えから142.13円まで急落し、米ドルは1%以上値下がりしました。

ドル円が1998年に記録した147.63円に接近するにつれて、市場での為替介入への懸念が高まるでしょう。本日の米ドルの動きにはタイミングも影響しました。米ドルは8月中旬から対円だけでなく、対主要通貨でも上昇しています。したがって、9月の0.75%の利上げが織り込まれる中、今回が米ドル高が一服する最適のタイミングだったようです。

パウエル議長はインフレ抑制姿勢を強調

昨日、パウエル議長はインフレ抑制の姿勢を改めて示しました。今週末からのブラックアウト期間を控え、今月の0.75%の利上げが明確に示されたようです。パウエル議長は、「インフレが十分に抑制されるまで利上げを継続する必要がある」と発言しました。

過去1か月間、0.75%の利上げの可能性は強まり、現在は約88%となっています。FRBメンバーは高金利継続の姿勢を示しているものの、翌週の米8月消費者物価指数発表控え、一部の市場参加者は一段の利上げに慎重姿勢を示す可能性があります。

昨日の米週次新規失業保険申請件数が3か月ぶり低水準となったことを受けて、米8月消費者物価指数が予想を下回っても、0.75%の利上げには影響しないでしょう。現在の所、米ドル安により、ユーロ/ドルはパリティを回復したものの、本日の米ドル安は一時的な動きに過ぎない見通しです。

ラガルド総裁の牽制にもかかわらず、ユーロ上昇

ユーロは、荒い値動きとなりました。ラガルドECB総裁の記者会見中、ユーロは下落したものの、本日には対米ドルで1.01ドル越えを達成しました。

昨日、市場で広く予想されていた通り、ECBは0.75%の利上げを発表し、追加利上げの可能性も示唆しました。ラガルド総裁は、今後の利上げ回数は5回を下回ると発言し、タカ派的期待を後退させました。

ECBがタカ派的見解で市場をサプライズさせても、欧州経済の見通しが悪化する中、ユーロの一段の上昇は期待できないでしょう。

本日、ベルギーでEU首脳会談が開催され、エネルギー危機対策が協議されます。ロシア産天然ガスの上限価格設定も提案されていますが、ロシアが供給を停止する可能性により、複数の国が反対しています。

エネルギー危機への懸念にもかかわらず、ポンド上昇

英国では、エリザベス女王死去が注目され、トラス首相の物価高対策には市場が殆ど反応しませんでした。

トラス首相が公表した対策では、今後2年間、各家庭での年間の電気・ガス料金の上限が据え置かれますが、企業では据え置き期間が6か月となっています。今後値上がりが見込まれる分は政府の借入金が使用される為、財政悪化への懸念から、市場の反応は限定的でした。

昨日に1.15ドル付近で推移していたポンド/ドルは、本日には1.16ドル台越えを達成しました。豪ドルは、コモディティ通貨の中で最も上昇した通貨でした。

株価は上昇して今週を終える模様

ECBの積極的な利上げ、及び米国は始めとする他国の中央銀行の利上げ姿勢にもかかわらず、本日も株価は上昇しました。昨日、利上げ方針に反応しやすいS&P 500は4000越えを達成し、本日の欧州市場でも株高の流れが引き継がれました。

中国8月消費者物価指数の予想外の低下は、中国政府の追加景気対策への期待を上昇させました。

経済の先行き不透明感が継続し、市場は欧州、及び英国の緊急エネルギー計画に満足しない中、市場は各中央銀行のタカ派的見解を織り込んでいる為、株価を押し上げている可能性があります。