デイリーマーケットコメントー停戦期待上昇で、戦争取引の勢い鈍化

投稿日: 2022年3月14日19時22分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 停戦協議での進展の兆しで、市場は若干リスクオンムード
  • 安全資産と原油価格は下落、株価とユーロは回復
  • 今週、FRBとイングランド銀行は利上げの模様

戦争取引の勢い鈍化

過去数週間の金融市場は、巨大な「戦争取引」に様変わりしました。経済状況よりも政治情勢が材料視され、殆どの資産はウクライナ情勢に完全に反応しています。ウクライナとロシアの停戦協議では、双方に進展の兆しが見られ、停戦実現の余地が残されています。

平和的解決への望み上昇を背景に、市場は慎重ながらもリスク資産が上昇し、欧州資産が買い戻されています。本日、ユーロ、及び欧州株価が上昇したものの、戦争継続への懸念が根強く残っている為、上昇幅は緩やかでした。

対照的に、安全資産、及び戦争リスクに反応する通貨は下落しました。利益確定売りの動きにより、ゴールド、円、国債、及び原油価格は下落しました。米国と日本の金利差の乖離も追い風となり、円は対米ドルで5年ぶり安値を更新しました。

インフレ、デフォルト、及び和平交渉に注目

今回の戦争が市場にとって、大きく影響する理由は複数あります。最も重要な理由は、インフレ上昇でしょう。ロシアへの経済制裁は、メタル、食糧、及びエネルギー価格を高騰させ、インフレ長期化に繋がります。

インフレの高進を受け、景気後退のリスクにもかかわらず、中央銀行は利上げをせざるを得ない状況となっています。

利上げは供給不足問題の解決には繋がらず、世界的需要を鈍化させるに過ぎません。しかしながら、現在の所、中央銀行が唯一対応できるのは利上げのみとなっています。したがって、ウクライナ戦争とコモディティ価格への影響が利上げ速度上昇に直結し、市場が最も影響を及ぼす要因となっています。

本日、停戦協議が再開し、緊張緩和の兆しが一段と見られた場合、リスクオンムード回復が加速するでしょう。

今週はFRBと英中銀の政策会合に注目

今週、FRBとイングランド銀行は、インフレ抑制の為、利上げを実施する模様です。市場は利上げを十分に織り込んでいる為、市場の反応は、最新のドットプロット、及びパウエル議長の発言内容次第となるでしょう。

前回のドットプロットでは、年内3回の利上げが予測されていました。現在、市場では年内7回の利上げが予想されている為、ドットプロットが上方修正されるのは確実ですが、市場の注目は、予測回数になるでしょう。

総じて、各中央銀行は強い通貨を望んでいることに留意する必要があります。米ドル高はインフレを抑制し、FRBが大幅な利上げを回避することができます。このことから、今週パウエル議長の発言がタカ派寄りとなる公算が大きいでしょう。

イングランド銀行の場合は、年内4回の利上げが予想されていますが、実現は難しい模様です。市場の利上げ観測ではなく、停戦がポンドを上昇させる要因となるでしょう。