デイリーマーケットコメントー核惨事への懸念でユーロ下落、米雇用統計に注目

投稿日: 2022年3月4日20時52分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ウクライナ国内の原発での火災は鎮火
  • 市場はリスクオフの流れとなったものの、その後に殆どの資産は回復
  • ユーロは例外でユーロ安継続、米雇用統計に注目

核惨事は回避

ロシア軍は欧州最大規模のザポリージャ原発を制圧しました。ロシア軍の攻撃により、敷地内の建物に火災が発生し、チェルノブイリ原発級の核惨事への懸念が上昇しました。その後、ウクライナの非常事態当局が鎮火を発表し、米エネルギー省が放射能レベルに変化はないことを発表しました。

核惨事の可能性は世界市場のリスク回避に流れを急速に強め、投資家は株価やユーロ建て資産を売却し、債券、ゴールド、及び原油等を購入して、ポートフォリオを変更しました。資金移動の一連の流れは、流動性に低いアジアセッション中に起こった為、大きな動きとなりました。

核惨事回避が明確になると、ゴールドと原油も上昇幅を失い、アジア株式市場と米主要株価先物指数も下落から回復しました。

ユーロ安継続、豪ドルとNZドル上昇

例外は欧州市場で、株価もユーロも下落から回復していません。核惨事リスクには、エネルギー価格高騰の中、消費者は実質収入の低下に直面するスタグフレーションへの懸念も含まれており、欧州経済を取り巻く先行き不透明感が浮き彫りとなりました。

ユーロ/ドルは急落し、その後には重要な心理的水準となる1.1000ドル付近で推移しています。今週の終値が1.1000ドルを下回った場合、ユーロ建て資産の売却継続による下落相場の見通しが一段と強固になるでしょう。

外国為替市場全体では、豪ドルとNZドルの力強い上昇が鮮明となりました。豪ドルもNZドルも、リスクムードで同様に動く傾向があるものの、最近はその関係も崩れ始めています。豪ドルとNZドルは、株安の流れではなく、コモディティ価格上昇を材料視したようです。欧州から遠く離れていることも、ポジティブな要因に繋がったようです。

米雇用統計に注目

本日の米雇用統計発表により、一時的としても、市場の関心はようやく経済指標に向けられます。米2月非農業部門雇用者数は、前回の結果を若干下回る40.0万人が予想されています。しかしながら、市場が完全雇用に近い状態であることを鑑みると、堅調な数値でしょう。

失業率も3.9%への改善が予想されています。FRBと市場が最も材料視するのは、賃金上昇で、前年比で緩やかな上昇となる見通しです。ISM非製造業景況指数を除いて、2月の労働市場に関する経済指標は概ね堅調な結果となっています。

ウクライナ侵攻後、米利上げ観測は後退しています。現在、年内の利上げ回数予想は、6回から5回に下方修正されました。

FRBは地政学リスク上昇時に利上げに積極的にはならないものの、インフレ上昇には米経済の大きな妨げとなります。したがって、必ずしも利上げの回数が減少するとは限らない可能性があります。

4%を下回る失業率、賃金上昇やインフレ上昇の加速の兆しを鑑みると、FRBは利上げをせざるを得ない状況に直面するでしょう。本日の雇用統計が強い結果となった場合、その傾向は一段と鮮明となり、米ドル高の流れが継続するでしょう。