デイリーマーケットコメントー原油価格一段高、ECBには頭痛の種

投稿日: 2022年3月3日19時27分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • OPECの現行政策維持決定で、原油価格は一段高
  • ユーロ安継続、翌週のECB政策会合で一段の下落の可能性
  • パウエル議長の議会証言は目新しい材料がなかった為、株価上昇
  • ウクライナとロシアの停戦協議再開に注目

コモディティ市場はパニック

コモディティ市場は乱高下となりました。ロシアへの経済制裁による影響で、食糧価格、及びメタル価格が急騰し、エネルギーショックがスタートしました。

コモディティ価格急騰で最も上昇しているのは、原油価格で、2008年以来の高水準まで達しています。ロシアの原油への明確な制裁はないものの、世界の企業や投資家がロシアの原油を拒否している為、原油不足ムードが作られているようです。

殆どのコモディティ価格は史上最高値付近まで急騰し、今後の供給不安により、コモディティ確保の為に高値でも購入しているようです。市場の乱高下にもかかわらず、昨日のOPEC会合では現行の緩やかな増産計画が維持され、供給不足緩和には繋がりませんでした。

ユーロにとってはネガティブなニュース

市場でのインフレ長期化予測を背景に、エネルギー価格に加えて、食糧価格も高騰し始めました。最近の市場でのインフレ上昇予測は、ECBを始めとする多数の中央銀行の頭痛の種となっています。

翌週のECB政策会合は、ジレンマに直面するでしょう。食糧、及びエネルギー価格急騰は、欧州経済成長に深刻な打撃を与えるでしょう。ロシア資産保有により、金融機関への打撃を回避できないでしょう。その一方で、インフレは一段と上昇する見通しです。

したがって、ECBは経済成長を優先してインフレ上昇期間を許容するか、或いは経済への打撃リスクにもかかわらず、インフレを抑制するかの選択を迫られます。どちらの場合でも、ユーロにとってはネガティブな要因になります。ECBは金融正常政策を停止するか、或いは時の運に任せて再び政策ミスのリスクに踏み切るか、どちらかの方法を選択するでしょう。

対照的に、米経済はインフレショックのみに直面します。米国はエネルギーで他国には依存しておらず、米金融機関はロシア資産を殆ど保有していません。したがって、経済成長打撃には繋がらないでしょう。

最近の展開により、ユーロ/ドルの見通しは一段と悪化し、テクニカル指標上も同様の見通しを示しています。

パウエル議長の議会証言で株価上昇

昨日、FRBのパウエル議長が議会証言において、0.50%の利上げの公算は小さいとの見解を示した為、株式市場のムードが回復しました。

国債利回りは上昇したものの、パウエル議長の発言ではなく、エネルギー価格高騰が上昇要因となったようです。

最近、名目利回りの上昇幅をインフレ見通しが上回っていることは、注目に値します。したがって、実質利回りはウクライナ侵攻前よりも大幅に低下していることになります。このことから、インフレが上昇しても、中央銀行がインフレ抑制に積極的に動かない可能性があり、ゴールドにとってポジティブな要因になります。

市場の予想通り、カナダ中央銀行が政策金利を引き上げました。カナダドルは利上げには大きく反応しなかったものの、原油価格高騰によって、上昇しました。

本日には、パウエル議長の上院での議会証言が予定されています。

明日の米雇用統計発表を控え、米2月ISM非製造業景況指数に注目が集まるでしょう。ECB議事録も発表されますが、現在の状況を反映していない為、材料視されないでしょう。

本日には、二度目となるウクライナとロシアの停戦協議が開催され、市場の注目が集まるでしょう。緊張緩和の兆しが見られた場合、金融市場では反転の動きが大きくなるでしょう。しかしながら、最近の戦闘激化を鑑みると、緊張緩和の公算は小さいでしょう。