デイリーマーケットコメントーウクライナ情勢深刻化で、原油価格高騰

投稿日: 2022年3月2日19時56分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ロシアへの経済制裁で、今週の原油価格は約20%上昇
  • 米ドル、円、ゴールドは上昇、利回りと株価は下落
  • ウクライナとロシアの停戦協議、パウエル議長の議会証言、OPECと英中銀政策会合

エネルギー市場は乱高下

ロシア軍のウクライナ侵攻により、金融市場は荒い値動きとなりました。市場での懸念の強まりを背景に、リスクヘッジ、或いは株式売却の動きが相次ぎ、一部の流動株がペニー株のように取り引きされています。市場ムードを最も反映したのは、原油価格の動きでした。

ロシアへの経済制裁により、供給不足が一段と進む前に、原油を確保する動きが強まりました。これにより、原油価格が押し上げられました。今週だけでも原油価格は20%値上がりしています。昨日、複数の国が石油備蓄放出を決定した為、市場で供給不足と判断され、原油価格が一段と上昇しました。

石油備蓄放出による原油価格高騰が起きるのは、過去数か月間で二度目のことです。OPECの減産政策終了、及びイランの原油輸出再開等の長期的な原油供給増加を市場が望んでいることが明らかです。長期的な原油供給増加が見られない限り、原油相場が反転する公算は小さいでしょう。

本日には、OPECプラスの会合が開催されます。増産ペースを加速させる兆しは見られませんが、2セッションで原油価格が20%の値上がりする前のことです。ロシアもOPECプラスの加盟国の為、ウクライナ情勢による協議が一段と複雑になるでしょう。、OPECプラスが対応しない場合、原油価格高騰が継続するでしょう。

安全資産上昇

安全資産への資金流入は明白でした。ポートフォリオマネジャーは、混乱を乗り切る為に、国債やゴールド等の安全資産の保有高を増加させました。

債券市場は、過去数年間で最も荒い値動きとなっています。中央銀行による金融引き締め見通しを背景に、資金が債券市場に流入し、利回りが急激に低下しました。インフレ上昇見通しにもかかわらず、地政学リスク上昇により、FRBが積極的な金融引き締めには着手しないことへの安堵も広がっています。

インフレ上昇の一方で、積極的な米利上げ観測後退により、国債利回りが低下しています。これは、ゴールド上昇に適した条件になります。米ドル高にもかかわらず、昨日のゴールドは1950ドル付近まで急騰しました。

外国為替市場と今後のイベントに注目

外国為替市場では、ユーロ/ドルの値動きが荒くなり、本日には一段と下げ幅を拡大させ、下落基調が再開しました。安全資産の需要増加により、米ドルの買い圧力が強まりました。同様に、円とスイスフランも上昇しました。

ロシアへの経済制裁による欧州経済への影響が懸念され、ユーロは下落基調となっています。エネルギー価格高騰は消費者に打撃を与え、ルーブル下落により、金融機関への打撃も回避できないでしょう。

本日には、多数の重要なイベントが予定されています。ウクライナとロシアとの停戦協議が再開します。過去数日間でロシア軍による攻撃が激化し、ウクライナ大統領がロシアのウクライナ侵攻を戦争犯罪と非難していることを鑑みると、合意に至る公算は小さいでしょう。

本日のカナダ銀行の政策会合では、利上げの可能性が80%と見なされています。

最も重要なイベントは、パウエルFRB議長の議会証言でしょう。インフレ率が既に高水準に達している中、最近の調査結果やエネルギー価格高騰は、一段とインフレ上昇見通しを示しています。しかしながら、米利上げ観測は後退しています。

したがって、FRBは地政学リスクによる先行き不透明感、或いはインフレ上昇のどちらをより懸念しているかに市場の注目が集まるでしょう。