デイリーマーケットコメントー緩やかな経済制裁により、市場の強い懸念は回避

投稿日: 2022年2月23日20時50分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ロシアへの経済制裁を受けて、S&P 500は修正局面に
  • 市場の限定的な反応により、市場ムード改善、ゴールドと原油価格下落
  • NZ中銀のタカ派的見解でNZドル上昇、豪ドルも堅調推移、米ドルは軟調推移

市場は慎重姿勢、しかしながらウクライナ侵攻への強い懸念は見られず

ウクライナの親ロシア派支配地域へのロシア軍派遣を受けて、欧米諸国がロシアへの経済制裁を発表しました。

ドイツは、独ロの新しい天然ガスパイプライアン(ノルドストリーム2)の認可手続きを停止する考えを表明しました。米国も厳しい金融制裁に踏み切り、今後ロシアはドル決済や資金調達が厳しくなります。他国は、ロシア企業や個人レベルでの制裁に留まりました。

今回は厳しい経済制裁は回避されたものの、ロシア軍がウクライナ政府の領土内に侵攻した場合には、一段と厳しい経済制裁が講じられるでしょう。米国はウクライナ侵攻の始まりと見なしています。米露首脳会談がキャンセルされる公算が大きいものの、市場は外交的解決への望みを諦めていないようです。或いは、自国経済への影響を考慮し、欧米諸国が新たな経済制裁を実施しないと市場は見なしているようです。

ウクライナリスク後退により、株価回復

ウクライナ侵攻が開始されても、市場への影響は緩やかに進む公算が大きく、経済全体への影響は想定よりも深刻にならない可能性があります。したがって、本日の市場ムードは改善しました。昨日の米株式市場での値下がり後、本日の米主要株価先物指数は上昇しています。

S&P 500は1か月ぶり安値まで急落後、2年ぶりに調整局面に突入しました。ナスダック指数、及びダウ工業株は1%以上下落しました。

本日の世界株式市場では、リスク選好ムードが回復しました。アジア株式市場は概ね上昇し、欧州株式市場も堅調なスタートとなりました。

原油高一服、ゴールドは1890ドル台を試す展開

市場のリスクオンムード回復を受けて、安全資産のゴールド、円、及びスイスフランは下落しました。ゴールドは1890ドル付近まで値下がりし、原油価格も下落しました。

昨日のブレント原油先物は100ドル目前の水準から下落し、本日には96ドル付近で推移しています。WTI原油先物は、直近では91.39ドルで取引されていました。

ロシアへの経済制裁による原油供給への懸念後退に加えて、イランによる供給再開見通しも原油価格の上値を重くする要因に繋がりました。

今後数か月間は、需要が供給を大幅に上回る見通しの為、原油価格の下落は懸念材料にはならないでしょう。

米ドルは狭いレンジ幅内で推移

リスクオフムードが後退し、FRBによる積極的な金融引き締めに懐疑的な見方も広がりつつあるため、米ドルは下落基調が継続しています。

最近のFRBメンバーによる発言から検討しますと、3月の0.50%の可能性は以前よりも小さくなりつつあります。しかしながら、米経済指標の強い結果により、3月の0.50%の利上げの可能性は依然として残っています。したがって、一部の市場参加者が0.50%の利上げリスクも過小評価している可能性もあります。

本日には、サンフランシスコ連銀のダドリー総裁、及びウォーラー理事の発言が予定されています。

NZ中銀のタカ派的発言でNZドル上昇、ポンドは下落

本日、外国為替市場の注目を浴びたのはコモディティ通貨でした。豪第4四半期の賃金上昇が緩やかな上昇となったにも関わらず、豪ドルは0.6%値上がりしました。カナダドルは約0.5%上昇しました。ニュージーランド準備銀行による3回連続の利上げを受けて、NZドルは1%以上値上がりしました。

NZ利上げは市場では広く織り込まれていたものの、議事録では0.5%の利上げも検討されていたことが明らかになりました。更に、政策金利は従来の2.6%から3.35%まで上方修正されました。

ニュージーランド準備銀行の予想外にタカ派的見解を受けて、NZドルは対米ドルで0.68ドル台目前まで上昇しました。

ユーロも市場ムード改善の恩恵を受け、対米ドルで1.1355ドル台を超えました。一方、ポンドは下落し、対米ドルで1.36ドル台を下回りました。

ニュージーランド準備銀行が0.50%の利上げも視野に入れる一方で、イングランド銀行は大幅な利上げには消極的姿勢を見せているようです。本日、イングランド銀行のベイリー総裁は、インフレ上昇によるリスクを指摘したものの、0.25%以上の利上げは示唆しませんでした。