デイリーマーケットコメントースタグフレーションリスクで株安、安全資産上昇

投稿日: 2021年10月1日19時28分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 「緩やかなスタグフレーション」で株価下落
  • 安全資産の需要増加で円とゴールド上昇、米ドルは底堅く推移
  • ISM製造業PMI、及びFRBメンバーの発言に注目

米株価下落

サプライチェーン問題、及びエネルギー危機の悪化により、世界的なスタグフレーション懸念が再燃しました。スタグフレーションは、景気後退時のインフレ上昇で、1970年代より見られるようになりました。

エネルギーコストが上昇する中、企業の収益減少を補填する為の価格引き上げは、消費者に影響を及ぼしています。更に、サプライチェーン問題が経済成長に影響し、中央銀行が利上げに向けて動いていることも、状況を悪化させています。現在の労働者は、1970年代のように、賃金引上げによる物価上昇の悪循環を引き起こす交渉力は持っていません。

現在の状況は1970年代よりもかなり小さな規模で、「緩やかなスタグフレーション」と呼ばれる状況に近いでしょう。中央銀行は、コスト上昇によるインフレに対応できず、中央銀行と市場の双方にとって、不利な状況となっています。サプライチェーン問題によるインフレに対応する為に利上げを実施しても、需要や経済成長を不必要に鈍化させる為、ポジティブよりも、むしろネガティブな効果となるでしょう。

このリスクが、現在の株価下落に繋がっている可能性があります。昨日、S&P 500は1.2%低下し、重要なサポートラインを割り込んだ為、本日の株価先物指数は一段の下落を示しています。リスク回避の流れが債券市場に影響を及ぼし、国債利回りが僅かに下落し始めた為、ハイテク銘柄が底堅く推移するようになりました。

当面の間、「緩やかなスタグフレーション」が市場を動かす要因となるでしょう。市場がリスクを織り込み、上昇したバリュエーションは下落しますが、大きなパニックではなく、一時的なショックとなる見通しです。したがって、依然として株式に代わる資産はないため、間もなく押し目買いの機会が訪れるかもしれません。

安全資産の需要が再び増加

株価が下落し、投資家がカバー先を求める中、安全資産の需要に増加が見られます。安全を求めて、債券の需要が増加し、国債利回り上昇が一服しています。円、及び利上げに反応するゴールドも上昇しました。

北米はエネルギー需要を自国で賄うことができる為、エネルギー危機の影響は受けません。そのため、米ドルとカナダドルは、他通貨よりも、底堅く推移するでしょう。世界的なエネルギー価格上昇は米国にも影響しますが、欧州やアジアほどの打撃は受けないでしょう。

政治に関しては、米議会で12月上旬までの暫定予算が設立され、政府閉鎖は回避されました。債務上限は引き上げられなかった為、10月18日までの超党派合意、或いは民主党による財政調整措置(リコンシリエーション)が必要になるでしょう。民主党も共和党もデフォルトを回避したい為、どちらの場合でも実質的なリスクとなる公算は小さいでしょう。

経済指標発表、及びFRBメンバーの発言に注目

本日、市場の最大の関心は、米9月ISM製造業PMIに向けられるでしょう。9月でのサプライチェーン問題の一段の悪化を見極め、及び翌週の米雇用統計の手がかりを求めて、市場が注視するでしょう。8月の経済指標も発表されますが、現在の状況を反映しない為、市場では材料視されないでしょう。

GMT15:00にはフィラデルフィア連銀ハーカー総裁、GMT17:00にはクリーブランド連銀のメスター総裁の発言が予定されています。