デイリーマーケットコメントーECBのタカ派メンバーはテーパリング支持、ユーロは反応せず

投稿日: 2021年9月1日18時44分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • インフレの上振れ、及びECBのテーパリング観測にもかかわらず、ユーロの反応は限定的
  • 昨日後半の米ドルは回復、米株価は最高値付近で推移
  • 本日は、米経済指標、及びOPECプラスの会合に注目

テーパリング観測へのユーロの反応は限定的

ECBが間もなく資産買い入れ枠を縮小するとの見方が、市場では広がりつつあります。昨日、オーストリアとオランダが順調な経済回復を明らかにしました。予想を上回る経済成長ペースを受けて、ECBのデギンドス副総裁も、大規模な緩和政策縮小への道が開けつつあるとの見解を示しました。

8月ユーロ圏消費者物価指数の強い結果も、量的緩和縮小観測の追い風となりました。サプライチェーンの混乱継続、及び夏の需要を受けて、8月ユーロ圏消費者物価指数は、前年同月比3.0%増まで上昇し、過去10年間で最大の伸びとなりました。ユーロ圏内の高いワクチン接種率が感染拡大リスクの減少に繋がっていることも、ユーロ圏内の回復を支えているようです。

現在、ECBは、パンデミック緊急購入プログラムと通常の資産購入プログラムの2つの量的緩和プログラムを同時に行っています。ECBは、パンデミック緊急購入プログラムを縮小させたい考えで、通常の資産購入プログラムの買い入れ枠を調整する可能性があります。つまり、パンデミック緊急購入プログラムを縮小し、その後に通常の資産購入買い入れ枠を拡大させた場合、全体の買い入れ枠は変わりません。したがって、FRBが予定しているような実質的なテーパリングにならず、ユーロの値動きにも影響しないでしょう。

ユーロ圏経済は、想定よりも好調に回復しています。しかしながら、本日の独8月小売売上高の脆弱な結果が示したように、経済再開ブームに過ぎない可能性があります。更に、救済基金の規模は、実質的な回復には不十分でした。利上げの見通しはなく、ECBは金融正常化で他の中央銀行から遅れを取っている為、ユーロの上値は重くなるでしょう。

米ドル回復、株価は底堅く推移

市場全体では、昨日は比較的静かな動きとなりました。米ドルは、国債利回りの回復を追い風に、前半の下げ幅を回復して引けました。

市場は、引き続きテーパリングの発表時期に注目しています。市場の大半の見方は、11月頃のテーパリング発表ですが、今週金曜日の米雇用統計が強い結果となった場合、発表時期が前倒しされる可能性もあります。本日には、米雇用統計の先行指標と見なされる米8月ADP全国雇用者、及び米8月ISM製造業PMIも発表されます。

昨日の米株式市場は荒い値動きとなり、若干下落して引けました。消費鈍化の兆しよりも、テーパリングが11月に先送りされる可能性、及び米議会での追加財政刺激策承認への期待が材料視され、米主要株価指数は、最高値を若干下回る付近を維持しています。今年の米消費者動向は大きく上昇した為、若干の調整は当然の動きでしょう。

OPEC会合に注目

本日の米経済指標発表前に、市場はOPECプラスの会合に注目するでしょう。OPECプラスが年末まで緩やかな増産政策を維持するか、デルタ変異株の感染拡大による需要低迷を受けて、増産が停止されるかが注目されます。

関係筋の情報から判断すると、OPECプラスは増産政策を維持する公算が大きいようです。この場合、原油価格の上値が重くなり、原油相場の影響を受けるカナダドルは低下するでしょう。市場の想定内の動きの為、原油価格とカナダドルは緩やかな下落に留まるでしょう。反対に、OPECプラスが増産停止を決定した場合、予想外の結果により、原油価格の上昇幅は大きくなるでしょう。