デイリーマーケットコメントー米経済の脆弱な結果で米ドル安、ゴールド回復

投稿日: 2021年8月16日19時04分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 米消費者物価指数の脆弱な結果で米ドル下落
  • 中国経済指標も脆弱な結果となり、アジアのリスクムード悪化
  • ゴールド価格回復、アフガン情勢への原油価格の反応は限定的

米消費者物価指数の脆弱な結果で米ドル安

先週金曜日の米8月ミシガン大学消費者物価指数が10年ぶり低水準となった為、外国為替市場は荒い値動きで引けました。米8月ミシガン大学消費者物価指数の予想外に脆弱な結果により、経済見通しだけでなく、テーパリング観測に市場で疑問が生じることになりました。

この流れを受けて、米ドルと国債利回りは大幅に下落しました。米ドル急落の恩恵を最も受けた通貨は、円でした。円は、金利差、及び国外の国債利回りの変化に敏感に反応する傾向があります。

今回の動きが消費鈍化、及び経済成長に影響するか、或いは経済指標に反映される程大きな影響にはならないかに市場が注目するでしょう。一段と大きな動きとなるかは、明日の米7月小売売上高の結果次第となるでしょう。

現在の所、今回の動きは、FRBがテーパリング時期を見直す要因にはならないでしょう。米経済は堅調な回復を継続し、米議会は大規模な追加財政刺激策に向けて動いています。テーパリングが9月に発表されても、11月に発表されても、米ドルには大きな影響はないでしょう。米ドルにとって重要なことは、FRBがECBや日銀よりも数年早く金融正常化に踏み切ることでしょう。

 中国経済鈍化の兆しで、アジアのリスクムード悪化

中国の経済成長にも失速の兆しが見られます。感染拡大による新たな制限、及び自然災害を背景に、中国7月の鉱工業生産、小売売上高、及び固定資産投資は、全て大幅な下落となりました。

中国経済指標の脆弱な結果を受けて、本日前半のリスク資産上昇の勢いが失速しました。アジア、及び欧州の株式市場では、全面安となりました。大きな下落にはならなかった為、パニックの動きは見られませんでした。本日の米主要株価先物指数も、株安の流れを引き継ぎ、若干下落してのオープンを示しています。

外国為替市場では、最も大きな打撃を受けた通貨は豪ドルでした。この数週間の豪ドルは、ロックダウン、鉄鉱石価格の下落、及び中国経済鈍化の兆しにより、上値の重い展開となっていました。

原油価格はアジアの需要悪化見通しを材料視、ゴールド回復

最近のアフガン情勢も市場の注目を集めていますが、市場への影響は見られていません。本日の原油価格は、アジアでの需要鈍化懸念により、若干下落して推移しています。

日第2四半期GDPは堅調な結果となり、W字型景気後退を回避できましたが、急激な感染拡大により、楽観的ムードは後退しました。日本の第5波は過去最多の感染者数を記録し、一段と厳しい制限が実施される可能性も浮上しています。

最近のゴールドは、大きく回復しています。ゴールドは、「ミニフラッシュクラッシュ」から回復し、先週を上昇して引けました。ゴールド回復の背景には、米ドルと国債利回りの低下があります。ゴールドの回復は、押し目買いを狙っていた投資家の存在を示しています。

米議会での追加財政刺激策に向けた動き、及びデルタ変異株の感染拡大による金融正常化遅延の可能性がゴールド上昇に繋がったようです。しかしながら、実質金利が過去最低水準となる中、ゴールドが大きく上昇していないことは、ゴールドの弱気相場を示しています。FRBがテーパリングを開始し、国債利回りと米ドルが回復した場合、米制服による追加財政刺激策も追い風となり、ゴールドの下落は加速するでしょう。