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地政学リスク上昇
新型コロナウイルスのリスクが継続する中、過去24時間で地政学リスクが大きく上昇しました。インドと中国が国境付近で衝突し、韓国の金委員長体制を批判するビラにより、南北関係の緊張が高まっています。最近の緊張の高まりは、地域内関係のターニングポイントを示唆している可能性があります。
最近の緊迫化は、非常に危険な状況に発展する可能性がありますが、現時点では市場は大きく反応していません。現在、市場がより懸念していることは、世界各地での第2波の兆しです。昨日、新型コロナウイルス感染者数が106名となった後、北京市当局は警戒レベルを引き上げました。中東や米国でも感染者数が増加していますが、米国では第1波の収束も確認されていないことから、現在の状況が第2波となるかを疑問視する見方もあります。
昨日、市場のリスクオンムードを後退させたもう一つの要因は、パウエル議長の議会証言でした。FRBの社債買い入れ決定は、市場のリスク選好の流れを強める要因となったものの、パウエル議長は、本決定の重要性に関して控えめな認識を示しました。更に、パウエル議長は、米経済回復は非常に不透明であると発言し、最近の経済指標結果に懐疑的な見方を示しました。
経済回復と治療薬への期待で株高の流れ継続
昨日の米株式市場は上値の重い展開となったものの、S&P500は3100台を超えて引けました。アジア株式市場は、前半の下げ幅を回復し、終値はほぼ上昇しました。本日のユーロ圏、及び米主要株価先物指数は、上昇幅を拡大する見通しを示しています。
第2波のリスク、及び地政学リスク上昇の中、市場は経済の力強い回復、及びワクチンや治療薬開発への期待を材料視しています。安価で入手しやすいステロイド剤が新型コロナウイルスの重症患者の死亡率を減らす効果があることが発表されました。更に、アストラゼネカ社が開発中のワクチンが、10月までに納入開始が可能なるとの見通しも市場の期待を上昇させました。
米5月小売売上高の予想を上回る結果もV字回復への期待を後押しし、リスクオンの要因となりました。米経済が5月より段階的に再開し、米小売売上高は前月比17.7%増となりました。年内の新型コロナウイルス終息の可能性が低いことから、V字回復は疑問視されますが、異例の財政刺激策により市場の楽観的観測が継続しているようです。
円とゴールド下落、豪ドルはレンジ相場の兆し
外国為替市場では、円とゴールドが下落し、より顕著な楽観的観測が見られました。本日、ハワイでポンペオ国務長官と中国外交のトップの楊氏との会談が予定されています。本会談で、米中の最近の衝突が解決する可能性は低いですが、会談の実現はポジティブと見なされるでしょう。
本日の米ドルとスイスフランは強弱混合の動きとなり、殆どの通貨は底堅く推移しました。豪ドルは0.3%値下がりし、最も上昇した通貨です。しかしながら、最近の上昇の調整の動きが見られない中、豪ドルの上昇勢いの維持は困難な模様です。したがって、市場は経済の力強い回復や第2波発生の新たな手掛かりを見極めようとしている為、レンジ相場に入った可能性があります。