デイリーマーケットコメントー対中制裁内容で円と米ドル下落、米暴動でゴールド高

投稿日: 2020年6月1日19時25分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • 対中制裁が厳しい内容にならず、株価上昇、米ドル下落
  • 豪中銀の政策会合控え、豪ドル上昇
  • 米国内の暴動拡大は、経済回復への懸念材料;ゴールド上昇
  • 今週はEU離脱交渉、ECB政策会合、米雇用統計に注目

対中制裁は厳しい内容にならず、市場はリスクオンムード

米国が公表した対中制裁が想定よりも厳しい内容ではなく、金融市場では安堵が広がり、本日はリスク資産が上昇しました。米国は香港に認めてきた優遇措置を停止しますが、トランプ大統領は詳細について言及しなかった為、今後の措置は段階的に実施されるとの見方が市場で広がっています。

重要なことは、トランプ大統領が第一段階の合意破棄について言及しなかった為、米中関係悪化につながる主要因への懸念が緩和されました。

株式市場には回復し、香港株式市場は3.4%上昇しました。中国株式市場は、2%以上上昇してから引けました。欧州株式市場も、大きく上昇してスタートしました。一方、米主要株価先物指数は、緩やかに上昇してのスタートを示しています。

豪中銀の政策発表控え、豪ドル上昇

外国為替市場では、リスクオンの流れが回復し、円、スイスフラン、及び米ドル等の安全資産は下落しました。ユーロとポンドは続伸し、米ドルインデックスは2か月ぶり低水準まで低下しました。

本日に最も堅調推移した通貨は、豪ドルでした。米中貿易摩擦悪化への懸念緩和、及び中国5月製造業の予想外に好調な結果が豪ドルの上昇要因となりました。オーストラリア準備銀行による追加緩和は終了したとの見通しにより、明日の政策会合では、追加緩和が示唆されない見方が広がっていることも、豪ドル高の追い風となりました。

米国内の暴動拡大で、ゴールド上昇

香港への国家安全法導入に対しての米国の対応が厳しい内容でない為、市場はリスクオンの流れとなっています。しかしながら、今後、米国による一段と厳しい措置の可能性を市場は把握していない可能性があります。現在の所、制裁は、国家安全法導入に関与した中国と香港の政府関係者に留まっています。しかしながら、中国が米国を挑発し続けると、米国が一段と強硬な措置に講じる可能性もあります。

米国では、先週の警察官による黒人男性殺害への抗議活動が国中に広がっています。暴動にまで発展した抗議活動は、閉鎖措置解除後の経済再開への努力を妨害し、大人数が集まることによるウイルス感染を再度広げるリスクもあります。

これにより、市場のリスクオンムードにもかかわらず、ゴールドは0.7%上昇しました。

財政刺激策への期待で、ユーロとポンド上昇

明日より再開する英国とEUの離脱交渉では進展が期待できないものの、ポンドは対米ドルで0.6%上昇しました。EU離脱後の移行期間延長の期限が6月末に迫る中、英国とEUは、交渉が進展しない原因は、相手側にあると非難しています。英政府が7月にも新たな財政刺激策実施する可能性が報じられ、市場は、離脱交渉よりもこちらを材料視した模様です。英国は他国よりも遅れて閉鎖措置を解除した為、回復にも時間がかかる必要があり、追加の財政刺激策が必要なようです。

ユーロ圏では、EUが提案した7500億ユーロ規模の救済基金に加えて、今週木曜日にECBが新型コロナウイルスによる緊急買い入れ枠の拡大を公表する模様です。ユーロは、財政刺激策により上昇しています。しかしながら、複数の加盟国が買い入れ枠の拡大に反対している為、想定よりも小規模な救済プログラムとなる可能性もあります。

今週には、米5月非農業部門雇用者数が発表されます。閉鎖措置解除後の労働市場への効果を見極める為、米5月非農業部門雇用者数は、市場の注目を集めるでしょう。