デイリーマーケットコメントー香港を巡る対立で人民元急落、株価は冷静な動き

投稿日: 2020年5月28日19時35分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ポンペオ米国務長官の発言で、香港は米国による優遇措置を失う公算大
  • 人民元と香港株式市場は下落、その他の市場は楽観的ムードが優勢
  • EUが7500億ドル規模の救済策を提案後、ユーロ上昇

米中対立は一段と悪化

今後、香港は優遇措置や世界的な金融ハブとしての特別な地位を失う公算が大きくなりつつあります。昨日、ポンペオ米国務長官は、香港に対して米国内法に基づく優遇措置を認められないと議会に報告したことを明らかにし、制裁措置の可能性も示唆しました。

米下院では、中国国内の少数派民族への人権侵害で中国当局者に制裁を科す上院案が可決されました。一方で、中国政府は、米議会内での反中姿勢の高まりを気にしていない模様です。昨日、全国人民代表大会では、国際的非難を引き起こした香港の国家安全法の制定方針が採択されました。

米中関係が日増しに悪化する中、中国国内の投資家は懸念を強めているようです。昨日、人民元は対米ドルで9か月ぶり安値まで急落しました。

世界株価は上昇基調維持:香港株式市場は下落幅の一部を回復

予想外にも、米中関係悪化により下落した市場は、中国市場と香港市場のみでした。中国政府が国家安全法導入を提案して以来、香港株式市場は下落基調を継続しています。現在の経済減速の状況下では、香港市場の値下がりは大きくはありませんでした。その他の市場は、冷静なムードを維持している為、本日の香港市場は、前半の下げ幅の一部を回復しました。

新型コロナウイルスによる回復に時間がかかるリスクや貿易戦争の可能性が大きくなったとしても、政府や中央銀行が必要に応じて介入する見方が市場で広がっている為、リスクオンムードが継続しているようです。

昨日、S&P500は3月5日以来初めて3000越えを達成しました。本日には、ナスダック指数の上昇に失速感が見られるものの、米主要株価先物指数は概ね上昇してのスタートを示しています。

日本とユーロ圏で大規模な財政刺激策が公表されたことにより、日本とユーロ圏の株式市場は上昇しています。本日の日経平均株価は、2.3%上昇しました。独株価指数は、直近では1%上昇して推移しています。

EUによる救済策の詳細開示後、ユーロ反落

一方の外国為替市場は、二日間の上昇後、ユーロは下落しました。昨日に約2か月ぶり高値まで上昇したユーロ/ドルは、1.10ドル台を割り込みました。昨日、ECBは7500億ユーロ規模の救済策の詳細を明らかにしました。

フランスとドイツが提案したように、5000億ユーロは供与の為、返済の義務はなく、オーストリア、デンマーク、オランダ、及びスウェーデンが合意するかは不透明です。したがって、救済策実施まで時間がかかる可能性があり、ユーロは下落基調となるでしょう。

その他の通貨では、米ドルが昨日の下落から回復し、対円とユーロで上昇しました。ジョンソン首相が離脱期間を2020年末以降まで延長するかを決める期限まで残り1か月となる中、英国とEUの交渉は、主要問題で膠着状態が継続しています。EU離脱交渉への懸念で昨日に下落したポンドは、本日には安定推移しています。