デイリーマーケットコメントーワクチンへの期待でリスクオン、FRB議長の議会証言に注目

投稿日: 2020年5月19日20時12分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ワクチン開発、FRBの追加刺激策、EU基金創設で株価上昇
  • ユーロとコモディティ通貨上昇、一方で円、米ドル、スイスフラン下落
  • リスクオン継続を見極める為、FRB議長の議会証言に注目

株高に追い風

コロナワクチン開発、FRBによる追加刺激策、及びEU財政刺激策への期待により、昨日の世界市場ではリスクオンの流れが強まり、S&P500は3.15%上昇しました。パウエル議長がFRB側の政策に「限界はない」と発言したことや、米バイオ医薬会社モデルナ社のコロナワクチンの初期治験での有望な結果がリスクオンの要因となりました。

更に、フランスとドイツが、新型コロナウイルスによる打撃を受けた加盟国を支援する為に、5000億ユーロ規模のEU基金創設の共同提案に合意したことも、リスクオンの流れを一段と強めました。

外国為替市場では、リスクオンの流れにより、豪ドル、NZドル、及びカナダドル等のコモディティ通貨が上昇しました。一方で、円、米ドル、及びスイスフラン等の安全資産は、回復したユーロに対して値下がりしました。

S&P 500 3月の高値水準を試す展開

米中関係悪化、及び感染拡大第2波等のリスクに直面する一方で、市場がリスクオンに傾いたことにより、市場がポジティブなニュースをいかに必要としていたことを浮き彫りにしました。小規模な第1相試験結果での判断は早すぎると多数の医療専門家が注意を促しているにもかかわらず、市場はワクチンへの期待によりリスクオンとなりました。

新型コロナウイルスのワクチンが早期に開発されると、今までの日常生活に戻ることができ、リスクオンの環境になります。

一方で状況や景気が一段と悪化した場合、例えば、企業倒産の増加、感染拡大第2波、或いは米中関係の緊迫化等が起こった場合、政府や中央銀行は、追加刺激策の実施を余儀なくされるでしょう。しかしながら、殆どの中央銀行は限界に近い政策を実施済みで、殆どの政府は追加刺激策の財源を確保することは困難でしょう。更に重要なことは、消費者心理が「通常」に戻るにはかなりの時間を要する可能性です。

現在の市場は、リスクオンの流れにより、S&P 500は3月の高値付近を試す展開となっています。株式市場の動きは、今後リスクオンの流れが継続するか、或いは再度リスクオフの流れに傾くか次第になるでしょう。

最近は、外国為替市場も株式市場の影響を受けています。豪ドルは、過去数週間で2回上昇を止めた重要なレジスタンス水準を試す展開となっています。

GMT1400には、パウエル議長の議会証言は予定されています。議会証言内容は既に公表されています。しかしながら、パウエル議長が追加刺激策にどれくらい前向きであるか、及びどのような刺激策の用意があるかを見極める為、市場は質疑応答に注目するでしょう。

EU基金創設の提案でユーロ上昇、しかしながら加盟国からの合意が必要

ユーロ圏では、ドイツとフランスが5000億ユーロ規模のEU基金創設の共同提案に合意したことにより、ユーロが急騰しました。基金の規模は大きくはありませんが、資金がEU予算内より各国に配分される為、債務の多いイタリア等の国にとっては、実質的な救済となります。

リスク共有の観点において、ユーロ圏のアキレス腱となっているユーロ債ではなく、基金創設が提案されました。しかしながら、財政面で保守的なオランダやオーストリアの反発の可能性もあります。