デイリーマーケットコメントーFRBによる追加対策への期待で、株価とゴールド上昇

投稿日: 2020年5月18日19時59分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • パウエル議長の発言で、米主要株価先物指数、及びゴールド上昇
  • 米中関係悪化、及び感染拡大第2波への懸念
  • EU離脱交渉決裂の懸念で、ポンド下落

パウエル議長の発言でゴールドと株価上昇

先週末、パウエルFRB議長は、国民が米経済の完全復活に十分な信頼感を持つには、ワクチンの出現を待つ必要あると発言し、経済のV字回復への期待を後退させました。パウエル議長は必要に応じて追加対策を講じる姿勢を明らかにした為、アジア株式市場は全面高となり、米主要株価先物指数も最大1%上昇してのオープンを示しています。

市場は、パウエル議長が経済支援のためのFRBの選択肢は尽きていないと発言したことを材料視した模様です。マイナス金利はFRBの最終手段だとしても、マイナス金利の可能性はゼロではなく、量的緩和や貸出プログラムの拡大の可能性が示唆されました。

FRBによる経済回復の長期化の見通しは、株価を上昇させ、ゴールドを7年半ぶり高値まで急騰させました。低金利が長期化するにつれ、金利の発生しないゴールドの魅力が上昇します。

国債利回りの低下、財政赤字の拡大、及び先行き不透明感の上昇により、ゴールドの需要が今まで以上に上昇しています。今後、ゴールドが一段と上昇し、最高値を更新する可能性も高まっています。

市場はリスクを完全織り込んでいない可能性

パウエル議長による消費者への心理的ダメージが長引く可能性の指摘に加え、現在の状況は、感染者数に減少が見られない状況での経済再開のリスク、及び米中関係の悪化に直面しています。

米国の多数の州は、経済の一部再開に踏み切っています。しかしながら、ニューヨーク以外の州では、感染拡大のピークにはまだ到達していないようです。経済の早期再開は、感染拡大の第2波、及び再度の閉鎖措置に繋がり、経済回復が遅れる可能性があります。

先週金曜日に、米政府が同国の半導体メーカーによるファーウェイへの製品販売の禁止を決定し、米中関係が一段と悪化しました。新型コロナウイルス感染拡大前の米中関係は既に冷え切っていましたが、トランプ大統領は新型コロナウイルス感染拡大の責任を中国側に追及している為、米中関係は悪化しています。トランプ大統領は中国への政治的圧力を強めることが鮮明となっている為、11月の大統領選挙に向けて、米中関係が一段と悪化する見通しです。

米上院共和党が追加の財政刺激策に消極的な姿勢を示したことも、市場の懸念材料となっています。FRBによる追加刺激策の可能性により、現在の所、市場は安定しています。しかしながら、市場を取り巻く多数のリスクにより、たった一つのネガティブなニュースで市場の流れが変わる可能性もあります。

EU離脱交渉決裂の可能性でポンド下落

英政府の新型コロナウイスへの対応、及び財政赤字拡大への懸念により、最近のポンドは下落基調となっています。

更に、英国とEUの離脱交渉で進展が見られず、英国が移行期間延長を要求する意向がない為、交渉決裂の懸念が浮上し、ポンドが一段と下落しました。現在の状況からは、年末に合意なきEU離脱となるか、或いは単に交渉手段に過ぎないのかを不透明です。しかしながら、今後のポンド相場は依然として不透明になるでしょう。

先週末、イングランド銀行のチーフエコノミストが、マイナス金利の可能性、或いはマイナス金利以上の政策の余地もあることを示唆し、ポンドの見通しは一段と悪化しました。