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パウエル議長の指摘で、回復への期待が大きく後退
昨日、市場の関心を集めたパウエルFRB議長の講演では、米経済悪化の見通しが詳細に示されました。パウエル議長は、経済回復までに時間がかかるだけでなく、長引く景気後退が経済の生産性に長期的なダメージを与えるとの見解を明らかにしました。
ソーシャルディスタンスを維持しながら閉鎖措置の緩和に踏み切った米国を始めとする国々では、新型コロナウイルス終息後のV字回復を期待していた為、パウエル議長の発言は、過去数週間に積み重なった楽観的観測を大きく後退させました。
更に、パウエル議長が「マイナス金利に関するFRBの見解には変更はない」と発言し、マイナス金利導入を否定したことも、投資家心理の冷え込みに繋がりました。FF金利先物が初めてマイナス水準まで低下後、過去数日間の市場では、米国のマイナス金利導入観測が上昇していました。
マイナス金利を支持してきたトランプ大統領は、FRBの方針に反対姿勢を示しました。更に、パウエル議長も追加の財政支援の必要性を示す中、民主党が提出した3兆ドル規模の追加経済対策法案に共和党が賛同しなかったことも、市場の懸念材料となりました。
パウエル議長の発言で株価下落、米ドルは上昇
昨日、パウエル議長による経済悪化の見通しは、感染第2波リスクに慎重姿勢ムードになりつつあった株式市場を一段と下落させました。米株式市場は二日連続での下落となりました。本日、ミニ先物指数は下落しのオープンを示し、S&P500先物は0.2%下落しています。
ハイテク関連株も下落しましたが、3月中旬以来のナスダック指数の大きな回復を考慮すると、利益確定の動きの可能性もあります。
外国為替市場では、米ドルが対主要通貨で上昇し、3週ぶり高値を試す展開となっています。FRBがマイナス金利の可能性を明確に否定した為、米ドルのリスク材料がなくなりました。したがって、新型コロナウイルスによる緊急事態に世界中が直面する中、安全資産の需要により、米ドルの買い圧力が強まるでしょう。
ポンドは5週ぶり安値、コモディティ通貨も軟調推移
パウエル議長の発言により、市場のリスクオフの流れが強まり、本日は円とスイスフランが全面高となりました。豪4月豪雇用統計の市場予想を下回る結果に加え、リスクオフムードにより、豪ドルは最も軟調推移した通貨でした。
昨日にニュージーランド準備銀行ががマイナス金利の可能性を示唆した後に下落したNZドルは、豪ドル安に追随し、3週ぶり安値まで急落しました。カナダドルは、原油価格回復により、若干安定しての推移となりました。
特に注目を集めた通貨はポンドで、感染拡大を抑え込めないだけでなく、経済支援策による財政赤字拡大への懸念により、過去1か月間、下落基調を継続しています。
大規模な資産購入プログラムにおいて、ドイツとECBの意見が対立する中、ユーロは比較的安定推移しています。
本日に注目の経済指標は、米週次新規失業保険申請数になるでしょう。