デイリーマーケットコメントー米中貿易摩擦再燃の兆しで、株価下落

投稿日: 2020年5月4日19時33分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • アマゾンの業績見通しで米株価下落、米中貿易摩擦再燃で一段の株安
  • 消費活動や消費者心理への長期的影響や脱グローバル化を遂に織り込みつつある可能性
  • 再びリスクオフの流れで米ドルと円上昇、豪ドルとNZドル下落

米中貿易摩擦再燃で株価下落

アマゾンによる今後の業績悪化の見通し、及び米中貿易摩擦の再燃が投資家心理に影響し、財政刺激策に後押しされた株高に失速感が見え始めました。

過去数年間、S&P500の最大手5社(マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル、及びフェイスブック)はマーケットシェアの拡大を継続し、現在、S&P500の5分の1を占めるようになっています。したがって、最大手5社の業績悪化はS&P500全体の株安に繋がります。先週金曜日にアマゾンが第2四半期でのゼロ成長の予測を公表し、S&P500は2.8%値下がりし、一部の大手企業が新型コロナウイルスによる影響を回避できるとの見通しはなくなりました。

週末中も、市場のムードは改善しませんでした。ポンペオ国務長官は、「非常に多数の証拠」が新型コロナウイルスが武漢の研究所より発生したことを裏付けていると発言しました。これにより、最近の米中の対立を一段と深めることになりました。11月の米大統領選挙では、新型コロナウイルス感染拡大と対策への責任が焦点になることから、トランプ大統領は、中国への非難を強めています。

米中貿易摩擦が再燃しつある中、米政府が年金基金による一部の中国株投資制限やサプライチェーンの国内回帰を検討していることをメディアが報道しました。

株高終わりの兆し?

大局的な流れとして、株式市場で予測されたV字回復は非現実劇となりつつあり、市場は新型コロナウイルス危機の実際の規模や期間を織り込みつつあるようです。倒産したり、数か月間もの期間、部分経営を余儀なくされている多数の中小企業、失業率増加による消費活動への長期的な影響、長期的な消費者心理の冷え込み、更に米中貿易摩擦による脱グローバル化の可能性も考慮する必要があります。

前回の米中貿易摩擦がグローバル化を減速させたなら、今回の新型コロナウイルス危機と米中対立は脱グローバル化につながる可能性があります。

コモディティ市場は、中央銀行による積極的な介入がなく、需要と供給のファンダメンタルズを反映している為、コモディティ市場の下落が世界経済の実際の状況をより鮮明に反映しているでしょう。過去数か月間、株式市場には数々の楽観的観測が織り込まれてきましたが、想定外の状況となった場合、下落幅は大きくなるでしょう。

外国為替市場も再びリスクオフの流れ

外国為替市場では、典型的なリスクオフの流れとなりました。安全資産の需要増加により、円と米ドルが上昇しました。一方で、豪ドルやNZドル等のコモディティ通貨は下落しました。

原油相場に安定した動きが見られたにもかかわらず、カナダドルは特に急落しました。カナダ中央銀行総裁が、状況に応じて、マイナス金利への引き下げの用意があると発言し、カナダドル安の追い風となったようです。

市場の慎重姿勢が継続した場合、米ドルと円は上昇基調となり、リスク通貨やユーロは下落基調となるでしょう。リスクオフの流れを変えるには、新型コロナウイルス治療薬へのポジティブなニュースが必要になるでしょう。

次の主要イベントは、明日のGMT04:30に予定されているオーストラリア準備銀行の政策発表になります。