デイリーマーケットコメントーウイルス治療薬への期待で株価上昇、緩和政策維持で米ドル安

投稿日: 2020年4月30日18時50分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog
  • ウイルス治療薬の可能性とFRBのハト派的姿勢で、株価一段高
  • トランプ大統領による中国批判で、株価下落
  • パウエル議長による一段の支援の必要性で、米ドル下落
  • ECBが一段の刺激策を決定するかに注目

疑問が残るものの、レムデシビルへの期待で株価再度上昇

新型コロナウイルスの治療薬候補であるレムデシビルの2つの臨床試験において効果が見られた為、世界経済に最悪の危機をもたらした新型コロナウイルスを収束できる希望が再度上昇しました。今月上旬には、レムデシビルの臨床試験で、患者の早期回復を促す効果がある可能性が認められましたが、その後の中国での臨床試験では、この効果は否定されました。

しかしながら、最新の臨床試験結果は、米食品医薬局(FDA)の早期承認の可能性を浮上させ、市場はワクチン開発も時間の問題と見なしているようです。

更に、昨日のFOMC政策会合後の記者会見において、パウエル議長がFRBの緩和的方針を改めて表明したことも、リスクオンの流れを強めました。リスクオンムードにより、米株価は上昇し、S&P500は2.7%上昇して引けました。アルファベットとフェイスブックの四半期決算が予想を上回る好調な結果となり、ナスダック指数の上昇は顕著で、本年度初めから本日までの下落幅を解消し、終値は3.5%上昇しました。

トランプ大統領が中国を非難

リスクオンムードは本日も継続し、アジア株式市場の終値は1-2%上昇しました。米主要株価先物指数は、約0.5%上昇しました。しかしながら、市場はレムデシビルへの誤った期待をしている危険があります。レムデシビルの使用は、ウイルスへの治療であって、治癒ではないことです。更に、ワクチン開発は数か月先になります。

ドイツでは閉鎖措置の一部が解除されますが、感染者数が再度上昇する中、今後閉鎖措置がどれくらい解除されるかは不透明です。

全てが順調で、今後数か月内に段階的に通常通りの生活に戻ったとしても、新型コロナウイルス感染拡大の鈍化後に世界が直面する問題は、トランプ大統領の発言で明らかになりました。ロイター通信のインタビューにおいて、トランプ大統領は、中国が米大統領選挙でトランプ大統領が不利になるように、中国は新型コロナウイルスについて早期に世界に通知しなかったと中国を非難しました。トランプ大統領は、「私には多くのことができる」と述べ、今後報復措置に繋がる可能性も浮上しました。

パウエル議長:米経済は一段の支援が必要

トランプ大統領の発言により株価は下落し、その一方で、パウエル議長の発言で既に上昇していたゴールドは0.5%値上がりしました。今後の状況悪化に備え、パウエル議長は、米経済にはFRBと米議会からの一段と支援が必要との見解を示しました。

一段の緩和政策の可能性により、米ドルは対主要通貨で2週ぶり安値まで値下がりしました。殆どの通貨ペアは安定推移し、カナダドルも回復しました。原油価格は三日連続で上昇したことにより、カナダドルは遂に米ドルで回復し、4月上旬以来初めて1.39ドルカナダドルを割り込みました。

新型コロナウイルスによる影響緩和を期待し、ユーロはECB政策会合に注目

本日のECB政策会合では、新型コロナウイルス対策として緊急資産購入枠拡大が予想されています。EU首脳会議では危機対応への対策が決定されなかったことにより、本日のECB政策会合の結果は市場を落胆させる可能性があります。更に、複数の国は既に閉鎖措置の一部を解除していることから、追加刺激策の必要性を見極める為に、決定は6月の政策会合まで持ち越される可能性があります。

市場の関心は、ユーロ圏第1四半期GDPにも向けられるでしょう。市場予想は前期比3.5%減となっています。