マーケットプレビュー-イタリアの政治的不透明感でユーロは一段の下落

投稿日: 2018年5月29日18時13分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

外国為替市場:本日の米ドルインデックスは0.2%上昇し、昨年11月以来の高水準まで上昇しました。イタリアの再選挙の可能性がユーロの上値を重くし、ユーロは軟調推移が継続しました。

株式市場: 昨日の米国は、メモリアルデーの祝日により、閉場でした。米主要株価先物指数の軟調推移により、本日は下落してのオープンが予想されます。

米朝首脳会談が来月初めにも開催される可能性が浮上する中、イタリアでの再選挙の可能性が地政学リスクのポジティブなシグナルに影を落としている模様です。

アジア株式市場ではリスク回避の動きが明らかとなり、殆どの市場が下落しました。日経平均株価とトピックスはそれぞれ0.55%と0.48%下落しました。最近の円高の動きも、日本の輸出企業の見通しに影を落としました。香港株式市場は0.92%下落しました。

欧州市場に関しては、主要株価先物指数が下落して推移し、大幅に下落してのオープンが予想されます。

コモディティ: 本日の原油価格は上昇しました。WTI原油先物は0.5%、ブレント原油先物は0.35%上昇し、共に昨日と先週金曜日の急落から若干回復しました。サウジアラビアとロシアがベネズエラとイランの生産減少をカバーする為に増産する可能性を示唆したことにより、市場での供給低下観測が後退しました。

本日のゴールド価格は上昇したものの、上昇幅は0.1%未満でした。先週金曜日に200日平均線がレジスタンスとして機能した後、心理的節目1300ドル台を再度割り込みました。市場はリスク逃避先資産として円を好んでいる模様で、ゴールドは引き続き欧州の政治情勢に殆ど反応しない模様です。

主要な動き: 政治的不透明感でユーロ安継続、円高継続

イタリアの政治的不透明感が新たなピークに達したことから、昨日のユーロは対主要通貨で下落しました。「五つ星運動」と「同盟」が連立政権を断念したことから、再選挙が実施される模様です。連立政権断念は、マッタレラ大統領が反ユーロ派のサボナ氏の財務相への指名を拒否した後に起こりました。

イタリアの政治的不透明感はユーロ圏へのもう一つの脅威になる可能性から、ユーロの下落圧力が強まりました。再選挙となった場合、反ユーロ派とポピュリスト政党が支持を一段と伸ばす可能性があり、ユーロ加盟の離脱の是非を問う国民投票のリスクも浮上します。再選挙は8月から9月の間に実施される可能性が高いようです。イタリア国債市場からの資金流出により、イタリア10年債利回りは一段と上昇し、2014年以来の高水準まで上昇しました。

ユーロ圏経済の長期見通しは引き続き好調となっているものの、短期的見通しが政治的不透明感により悪化したことにより、ユーロ圏経済成長の勢いが失速しているようです。これにより、ECBは金融正常化により慎重な姿勢を見せつつあります。イタリアの政治的不透明感が長引いて、ECBが「躊躇」する姿勢を示すと、短期的下振れは排除できないでしょう。

リスク逃避先資産と見なされる円は、ユーロ圏不透明感で最も恩恵を受けた通貨のようです。本日のユーロ/円は約0.7%下落し、11か月ぶり安値を更新しました。米ドル高の流れにも関わらず、ドル/円も0.5%下落しました。

実際に、昨日の米ドルインデックスは昨年11月以来の高水準まで急騰し、本日には一段と上昇幅を拡大させて0.2%上昇しました。ユーロが米ドルインデックスの割合の50%以上を占めていることから、最近の米ドルインデックスの急騰は、米ドル高よりもユーロ安が要因として見なされています。

本日これからの市場: 米消費者信頼感指数、イタリア政治情勢、地政学リスク進展に注視

本日は主要な経済指標発表が多数控えていない為、唯一注目される指標は米消費者信頼感指数になるでしょう。イタリアの政治情勢、及び地政学リスク進展が市場を動かす要因となるでしょう。

GMT0800には、ユーロ圏4月マネーサプライ、及び民間借款が発表されます。GMT1530には、ラウテンシュレーガーECB専務理事が金融政策について講演を行います。

GMT1300には、米3月S&Pケースシラー住宅価格指数が発表されます。GMT1400には、米5月消費者信頼感指数が発表され、前月結果の128.7から128.0への若干の鈍化が予想されています。

イタリアのマッタレラ大統領が反ユーロ派のサボナ氏の財務相への指名を拒否したことにより、再選挙が検討されている模様です。反エスタブリッシュメント政党である「五つ星運動」と「同盟」が支持力を急速に伸ばしていることから、再選挙となった場合には、一段と支持率を獲得する可能性があります。ユーロはイタリアの政治情勢に敏感に反応する見通しの為、今後の進展が注視されるでしょう。

地政学リスクに関しては、米朝首脳会談が完全に中止になったわけではなく、両国が実現に向けて調整している模様です。貿易問題に関しては、米中間の協議は今後実施される予定です。

政治情勢、及び地政学リスク進展は通貨市場だけでなく、株式市場、及び債券市場にも影響することは重要です。

テクニカル分析:

本日のEURUSDは一時11か月ぶり安値1.1585ドル付近まで急落し、現在の所、1.1585ドルを若干上回る水準で推移しています。転換線が基準線を下回り、共に急な下落を維持していることから、短期的弱気相場が示されています。しかしながら、遅行スパンが売られ過ぎ市場を示しています。

EU、とりわけユーロ圏の弱体化要因と見なされるイタリアの政治的不透明感は、EURUSDを一段と押し下げました。昨年11月上旬に記録した10か月ぶり安値1.1553ドル付近がサポートとして機能するでしょう。一段と下落した場合、1.15ドル台が視野に入るでしょう。

反対に、イタリアの政治情勢がユーロに好意的な状況となった場合、EURUSDは回復するでしょう。本日前半にサポートとして機能しなかった1.16ドル付近がレジスタンスゾーンになるでしょう。一段と上昇した場合には、1.17ドルを含む転換線上の1.1711ドルが控えています。

米消費者信頼感指数、及び他の米経済指標結果もEURUSDの値動きに影響するでしょう。