マーケットプレビュー-米中貿易戦争保留で、リスクオンが加速

投稿日: 2018年5月21日18時26分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

外国為替市場: 本日の米ドルインデックスは0.3%上昇し、本年度最高水準を記録しました。米中貿易摩擦緩和により、リスク逃避先資産の円は下落を継続しました。

株式市場: 先週金曜日の米株式市場は下落して引けました。S&P総合500種とナスダック指数はそれぞれ0.26%と0.38%下落しました。ダウ工業株30種には殆ど動きがありませんでした。

アジア株式市場では、日経平均株価が0.31%上昇したものの、トピックスは0.08%下落しました。香港株式市場は0.82%上昇しました。

欧州市場に関しては、殆どの主要株価先物指数が上昇してのオープンを示しています。唯一の例外は、イタリアのFTSE MIBとなります。

コモディティ: 米中貿易戦争「保留」のニュースにより、市場は全般的にリスクオンの流れとなり、原油価格が上昇しました。WTI原油先物とブレント原油先物は0.8%上昇しました。貿易摩擦緩和の兆しは、世界経済成長を取り巻く下振れリスクを減少させました。その結果、世界的な原油需要を増加させ、原油価格を上昇させました。ベネズエラのマドゥロ大統領再選のニュースも、原油価格上昇の要因となったようです。マドゥロ大統領再選は、米国によるベネズエラへの新たな制裁の可能性を上昇させました。

ゴールド価格は0.6%下落し、本年度最安値1282ドルを更新しました。貿易摩擦後退と米ドル高がゴールド価格の下落要因となりました。

主要な動き: 米中貿易戦争保留により、リスクオンの動きに

先週の米中通商協議では、数カ月前に公表された追加関税の撤回が決定されました。先週末、ムニューシン米財務長官は、米中の貿易不均衡を是正する為に、中国が米製品購入の大幅な増加に合意したことを公表しました。更に、ムニューシン米財務長官は、「貿易戦争は一旦保留となり、両国が追加関税撤廃に合意し、追加関税なしでの枠組みで取り組む」と述べました。

市場は典型的な反応の「リスクオン」の流れとなり、貿易問題への懸念は緩和されたようです。本日の米主要株価先物指数は急騰して推移し、大幅に上昇してのオープンが予想されます。一方、ゴールドや円等のリスク逃避先資産は急落しました。

本日、心理的節目となる110円台を越えを達成したことが追い風となり、現在、ドル/円は0.5%上昇して推移しています。米ドルは全面高となり、米ドルインデックスは7か月ぶり高水準93.97を更新しました。ユーロ/ドルとポンド/ドルは共に0.4%下落し、6か月ぶり安値を更新しました。

その他のニュースでは、先週金曜日に発表されたカナダ経済指標の比較的脆弱な結果を受けて、カナダドルが一段と下落しました。消費者物価指数は強弱混合の結果となったものの、小売売上高は低調な結果となりました。しかしながら、翌週に控えたカナダ中央銀行の政策会合での利上げの可能性に影響はなく、依然として32%付近が維持されています。カナダ中央銀行は以前に想定外の利上げで市場を驚かせたものの、政策会合まで重要な経済指標発表やカナダ中央銀行メンバーによる発言が予定されていないことを考慮すると、32%の利上げの可能性は若干誇張されているようです。

本日これからの市場: 貿易戦争と政治情勢が主要な市場の関心に

本日には主要な経済指標発表が控えていない為、市場の関心は、貿易問題と政治情勢の進展に向けられるでしょう。

貿易問題に関しては、鉄鋼への関税に関する協議が平和的解決に向かい、貿易摩擦のリスクが一段と後退するかに注目されるでしょう。貿易問題の協議進展には、6月12日の米朝首脳会談の円滑な実施が不可欠となるでしょう。リスクオフが一段と後退した場合、水曜日にFOMC議事録発表を控えた米ドルが一段と上昇する可能性があります。

イタリアでは、2つのポピュリスト政党である、反エスタブリッシュメントの「五つ星運動」と極右「同盟」が連立政権樹立に向けた政策に合意しました。次期首相候補も公表される模様です。

今週には、英国のEU離脱交渉がブリュッセルで再開し、ポンド相場を動かす要因となるでしょう。

テクニカル分析: USDJPYは主要なレジスタンス111円台を越え、短期的強気相場

米中貿易摩擦への懸念が後退し、本日のUSDJPYは111円台越えを達成し、4か月ぶり高値111.36円が視野に入りつつあります。4時間足チャート上のUSDJPYは、平均線と一目均衡表の雲を超えて推移しており、短期的強気相場の継続が示されています。モメンタム指標もポジティブなサインが現れています。MACDがゼロと赤のシグナルラインを超えて推移しています。しかしながら、RSIは既に買われ過ぎの70を超えていることから、一段の上昇の余地はあまり残されていません。

USDJPYは一段と上昇した場合、112円付近がレジスタンスゾーンとなるでしょう。112円台越えを達成した場合、1月に何度も記録した112.80円が視野に入るでしょう。その上には、主要レベルとなる113円が控えています。

反対にUSDJPYが下落した場合、111円がサポートゾーンとなるでしょう。一段と下落した場合、20日平均線上の110.65円が控えています。110.65円を下抜けた場合、今年初めから何度も試した110円が視野に入るでしょう。