マーケットプレビュー-米国債利回り上昇で再び米ドル高に

投稿日: 2018年5月16日18時27分(JST)投稿. 詳細を読む JP Blog

外国為替市場:昨日に急騰した米ドルインデックスは、本日も上昇を継続しましたが、0.1%未満の上昇にとどまりました。米小売売上高の強い結果が米10年債利回りを上昇させ、再び米ドル上昇の追い風となりました。

株式市場: 昨日の米国債利回り上昇により、米株式市場は下落しました。企業では借入コスト上昇により、自社株購入と債務借り換え等が妨げられ、収益低下に繋がっている模様です。ナスダック指数は急落し、0.81%下落しました。ダウ工業株30種とS&P総合500種はそれぞれ0.78%と0.68%下落しました。米主要株価先物指数は上昇して推移しているものの、上昇幅はわずかとなっています。

アジア株式市場も下落基調となり、日経平均株価とトピックスはそれぞれ0.44%と0.27%下落しました。香港株式市場は0.36%下落しました。

欧州市場に関しては、殆どの主要株価先物指数が昨日の水準で推移しています。例外はイタリアのFTSE MIBで、0.6%低下してのオープンが予想されています。

コモディティ: 本日の原油価格は値下がりし、WTI原油先物とブレント原油先物は共に0.3%下落しました。昨日の原油価格は数年ぶり高値まで上昇したものの、その後の米ドル高の動きにより、下落しました。本日発表される米原油在庫と米ドルの値動きが、原油価格に影響するでしょう。

昨日の米ドル高により急落したゴールド価格は、本日には0.3%上昇しました。ゴールドは200日平均線と心理的節目となる1300ドル台を下抜け、本年度最安値を更新し、短期的弱気相場に転換しました。

主要な動き: 米小売売上高の強い結果と米国債利回り上昇で、米ドル高に

昨日の米ドルインデックスは、米国債利回り上昇を受けて、5か月ぶり高水準まで上昇しました。10年債利回りは、2011年ぶり高水準となった3.09%まで上昇し、その後3.06%まで下落しました。興味深いのは、米ドルと長期国債利回りの相関関係が2017年後半と2018年初めでは消失していたものの、2018年第2四半期では復活したことです。

昨日の米ドル高の主要因は、米小売売上高の強い結果でした。コアでの数値は市場予想を下回ったものの、前月結果が上昇修正され、米消費の全体的に好調な見通しが浮き彫りとなりました。ユーロ/ドルとポンド/ドルは5か月ぶり安値まで急落し、ドル/円は110円台を回復して3か月ぶり高値を更新しました。

もう一点注目すべきことは、市場では年内あと3回利上げへの期待が高まりつつあることです。あと2回の0.25%引き上げは完全に織り込まれています。フェデラルファンド金利先物では、あと3回利上げの可能性が先週の20%から36%まで上昇しています。

本日発表された日第1四半期GDPは予想外に低下し、2年連続の上昇は継続しませんでした。しかしながら、円相場への影響は見られず、円は対米ドルとユーロで上昇しました。

新興市場では、トルコリラが急落し、対米ドルとユーロで最安値を更新しました。エルドアン大統領が、大統領選で再選された場合、金融政策の統制に着手する姿勢を見せたことにより、トルコリラが下落しました。エルドアン大統領の発言は、中央銀行の独立性、及びインフレ上昇を阻止する利上げに新たな懸念を及ぼしました。

 

本日これからの市場: ユーロ圏消費者物価指数、米住宅着工件数、及び米建設許可発表

GMT0900には、ユーロ圏4月消費者物価指数・確報値が発表されます。市場予想は前月比0.3%増と前年比1.2%増となっており、前回結果より若干鈍化する模様です。ECBが目標とする年率2%のインフレにも届かないものの、近づいています。食料、燃料、アルコール、及びタバコを除くコアのインフレにも注目が集まるでしょう。

GMT1230には、米4月住宅着工件数、及び米4月建設許可件数が発表されます。米4月住宅着工件数は、前月結果の前月比1.9%増から前月比1.1%減になる模様です。

GMT1230には、カナダ3月製造業出荷も発表されます。

GMT1315には、米4月鉱工業生産が発表されます。市場予想は、前回結果の前月比0.5%増を上回る前月比0.5%増となる見込みです。同時刻には、鉱工業生産とセットになって、米4月製造業生産と米4月設備稼働率も発表されます。

オイルトレーダーは、米エネルギー省が発表する原油在庫に注目するでしょう。市場予想は80万バレル減となっており、2週連続での減少となる見込みです。

本日決算を発表する米企業にはシスコが含まれます。シスコの決算報告は、米株式市場終了後に予定されています。

GMT1200には、コンスタンシオECB副総裁の退任コンファレンスで、ドラギ総裁を含む多数のECBメンバーによる発言が予定されています。GMT1230には、アトランタ連銀のボスティック総裁が米経済に関する講演を行います。GMT1415には、カナダ中央銀行のシェンブリ副総裁の講演が予定されています。

地政学関連ニュースでは、米韓合同軍事演習を理由に、北朝鮮は南北会談中止を決定しました。今回の決定が、6月に予定されている米朝サミットにどのように影響を及ぼすかが注視されるでしょう。

テクニカル分析: WTI原油先物は3年半ぶり高値付近、ストキャスティックで超短期的弱気相場

WTI原油先物は、昨日に記録した3年半ぶり高値71.89ドルを若干下回る水準で推移しています。転換線と基準線が上昇して推移していることから、短期的強気相場の兆しが示されています。しかしながら、ストキャスティックでは、%Kが%Dを下抜けて共に下落していることから、超短期的弱気相場のシグナルが出現しています。

本日発表される米原油在庫に予想以上の減少が見られた場合、WTI原油先物は上昇するでしょう。この場合、72ドルを含む昨日の3年半ぶり高値71.89ドル付近がレジスタンスゾーンとなるでしょう。一段高となった場合、73ドル付近が次のレジスタンスゾーンとなるでしょう。

反対に原油在庫が増加、或いは予想を下回る減少となった場合、最初のサポートゾーンとなるのは、71ドル付近でしょう。その下には、現在の転換線上の69.75ドルと基準線上の68.47ドル付近が控えています。